短編

□ツンツンデレツン
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「(あ、消しゴム)」


わあ、私って馬鹿だ!テストの日に消しゴムを忘れちゃうなんて。ほんとに忘れたのかを確認するために、カンニングをする生徒がいないか、目をぴかぴと光らせる先生に気づかれないように、机の中にあるペンケースに手を突っ込んでみた。だけど掴めるのはやたらと多いペンだけ。知らないうちに、消しゴム探しに夢中になり、教室にはカシャカシャと、小さな音が響いていた。すると私の後ろで咳ばらいが聴こえ、恐る恐る振り返れば、やっぱりそこには先生。「す、すみません」と、謝り、私はテスト用紙を泣きたい想いで見つめた。このテストの点数が悪ければ、罰として携帯を没収されてしまう。


「はぁ」


今の私には一問のミスだって惜しいことなのにな。諦めるにしてもやっぱりこれは悔しい。消しゴム無しで消えないかな。試しに指でゴシゴシと擦ってみたけど、白い紙に私の書いた文字の回りが、黒ずんだだけ。余計にやばいかも。どうしようか悩んで、今はとりあえず、問題を飛ばすことにした。このままじゃ、回答欄全部を埋めるなんて無理。だったら今からの問題を精一杯頑張ろう。まだまだ平気!


「(………終わった…)」


あれから問題をまた解き始めてから10分。これで4回目くらいの記入ミス。もう、完璧に終わった。でも、テスト頑張るなんて、私のキャラじゃなかったんだって考えれば良いんだしさ。うん、そうだよ。今は開き直ることでしか自分を慰められないもん。鉛筆を手放し、机に突っ伏して、しばらくぼーっとしている私。鉛筆をはしらせる音だけが耳に入った。そんな音に聴き入っているとどこからともなく飛んできた紙屑。隣にいる敦也を見ると目が合ったから、たぶんこれを投げつけてきたのは敦也。紙屑を開くと中には、角が取れて黒くなった小さい消しゴムが一つ入っていた。もう一度、敦也に視線を送ったけど、敦也はもう私の方を見ることはなかった。


「さっき、ありがとね」


消しゴムを渡してお礼を言うと、もごもごと口ごもらせて、「ばーか」と、呟く敦也。


「べ、別にお前が困ってるからってゆう訳じゃねーから!」

「…えっ?」

「なんか人助けしようかな、とか思っただけ!勘違いすんなよ…!」


そうは言ってても顔がものすごく赤いの、敦也は気づいてるのかな?


祢音ちゃんとのメールで敦也のツンデレの話になったので^^

お題/ビス魔様

20100712

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