短編

□あなたに触れられた頬
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「…風介」



彼の優しくも、儚い笑顔。それは愛してるなんて一言には言い表せない不思議な感じ。もっと、もっと、その笑顔で笑ってほしい。私は、そのためなら何もいらないんだよ。声には出せない感情。でも、今日のあなたは、いつもと何か違って、このまま離れたら消えてしまうんじゃないかと心配してしまう。だからこそ、彼のトレードマーク、肩までまくられたTシャツを、どこにも行かないようにつんと引っ張ってみる。あなたは目をぱっちりと見開いた後、私の頬をつまんでにっこり。痛い。だけど、いつまでも、いつまでも、こうしててほしいって思ってしまうのはなぜだろう。私はMでもなければSでもない。どうして?この不安は一体何?いつのまにか、消えたあなたの笑顔。ねぇ、笑ってよ。どうしてい今日はこんなに不安にさせるの。彼の私の頬をつまむ手の強さは次第に弱まり、それは触れる程度に。ゆるりと頬から離れる手。止めることが出来なくて、止めてはいけない気がして、私はただただ、そのどこか儚い表情を見つめていることしか出来なかった。







「…好きだよ」




離れた大好きなあなたの手。離さないで、そう言えば、あなたを止められたかな。








あなたに触れられた頬





暖かくて、忘れられない、大好きなその感触も、悲しいけど今となっては昔の話なんだね。













end












切ない?分からない。書けない。お題は緋桜の輝き様より。


岡田理紗

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