短編

□出会えた奇跡に、ありがとうを
1ページ/1ページ

















「世界は広いから」





私達の真上、満天の星空を指差した一之瀬くん。彼は、「広い、からさ」と意味ありげな、リピート。首を傾げ今日はどうしたのかと聞くと、頬っぺたをカリカリと人差し指でかいて、「うーん」なんて俯くから、もしかして、アメリカに帰るの?と、分かりもしないくせに、自分に問い掛けた。そして、不安が私の胸を駆け巡る。


「嫌だよ?」

「…え、嫌って?」



私、一之瀬くんがアメリカに帰っちゃうなんて絶対嫌。だいたい、アメリカにいつかは帰るって分かってて私のことを好きにさせて、もうそろそろアメリカに帰ります。なんて、絶対嫌。私には一之瀬くんが必要だもん。どうせ、私一人残して帰って行くなら、最初から日本に来るなって話。…とか、強がって一之瀬くんを睨んでみても、心があなたを好きだから。涙が溢れる。「わわわっ」ポケットから出したハンカチを私に貸して、一之瀬くんは背中をなでなで。「何でなくんだよ」その困った表情、やっぱり無責任だよ。



「だって、アメリカ帰っちゃうんでしょ?」

「………悪い」




あーあ、そこは嘘でも否定してほしかった。口をへの字に曲げ、すまなそうな顔をする一之瀬くん。そんな顔したって絶対に許さないから。よし、無責任な彼には私付きでアメリカに連れてってもらおうか。だけど、「また、アメリカでサッカーが出来るんだ」なんて聞いちゃったら、どんなに私がひねくれ者でも、そんな意地悪は言えなくなっちゃう。その笑顔はもう反則じゃないかな。…サッカーなんて、サッカーなんて…日本でも出来るじゃん。ここには円堂や鬼道、豪炎寺が居て、私も居るんだよ?それでもあなたはアメリカを取る。そんなの分かってるからこれは言わないことにしたんだ。「ほらっ」一之瀬くんの指差す夜空。これが、あなたと見れる最後の夜空なのかな。




「世界は広いから。簡単には会えない」

「…そうだね」

「だけど、空はどこに居ても変わらない」

「一つって意味?」



「まあね」ニコッと笑った顔がにくいです。そうやって良い言葉を残して、私の目の前から消えるつもりでいるんだから。分かってるよ。あなたのしようとしてること。ずっと一緒に居たんだもん。分からない訳無いよ。




「どこに居ても空は同じ」

「………」

「違う所に居るようで、同じ場所に居るんだよ」

「まぁ、そうなのかな?」

「な、そう考えると、世界も狭いものだろ?」









そしてアメリカに帰って行ったあなた。約68億人っている中で二人が出会えたことは奇跡なんだよと残して。それでも、私にはもう二度と彼とは会えない気がするから、そう考えちゃうと、やっぱり世界は広いよ。あなたには狭くても、私にはとてもとても狭いとは考えられないんだ。私には、この世界はちょっと大きすぎる。






それでも、この出会いに感謝します。だから





貴方と出会えた奇跡に、ありがとうを













(また、いつか会えるさ…)













end












切なく書けたかな…?お題がすごすぎて理紗にはちょっと…。でも、読んでくれてありがとうございました。お題は緋桜の輝き様より。


岡田理紗

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ