短編

□一目惚れでした
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雷門中との練習試合。こんな弱小チームを、どうして俺らなんかが相手にしなくちゃいけないんだ。おまけに俺らがおじゃまする側なんて…。普通、向こうが来るとは思わないか?そんなことを行のバスの中で帝国のみんなと話していると、あっという間にもう雷門中。「行くぞ」と仕切る鬼道の後に付き、雷門中のグランドへ。ふーん、あれが雷門中サッカー部のキャプテンか。オレンジのバンダナを付けた熱い奴。で、あっちがその他の部員…。




「みんな頑張ってね」




こんな弱小チームを応援する奴なんかいるんだな。マネージャーか?ふわふわした長い髪の毛、ほんのり赤く色付いている頬。ぱちっとした目。まぁ、可愛い奴じゃねーの。認めたくないけど俺は名前も知らないそいつにくぎ付け。あの子は一体誰なんだ。落ち着いた静かな声に俺は耳をすませ、あんな子に応援される雷門中の奴らをうらやましく思った。しばらく俺の視界を支配したのはやっぱりあの子。「おい、佐久間」と声をかけてきた源田を無視して、俺は彼女をぼーっと見つめ、雷門に転校してみたいって少しだけ考えてみたり。あ、今目あった。俺と目のあった彼女は恥ずかしがる俺に「今日は、よろしくお願いします」、にっこり笑顔。どうして良いか全く分からないから隣の鬼道に助けを求めると、鬼道は大人な対応。そして試合が始まって、結果は雷門中の勝ち。雷門の奴らと喜ぶあの子に名前をきいてみようか、どうか迷ってわざと荷物を片付ける手を遅めた。早くしろと催促するみんなに分かってると言って、また迷いながら片付け。先にぞろぞろとバスに戻って行くのを見計らい、また俺の視線はあの子へと。



「帰ろうぜ」


円堂守とかいうキャプテンがみんなを引き連れ戻る中、俺は今だにくずくず。もう、ダメだ。諦めよう。ゆっくり、ゆっくりと着替えやタオルをたたんでいた手を一度止め、ちょっと考えてから、全部丸めてスポーツバックの中に。最初は余裕だったバック、今はパンパン。入らなくなった水筒を手に立ち上がり、みんなが待つバスに。総帥は怒っているだろうな。そんなことを考えると足は重くなり、とぼとぼ歩き始める。「あの…」と肩を叩く手に気がつき、振り返るとそこにはあの子。「忘れ物、あなたのですよね?」差し出された見覚えのあるタオル。でも違う。これは俺のじゃない。そこでふと思い浮かんだのは源田の顔。そうだ、これは源田の物だ。それを受け取り、ありがとうを伝えると、用のなくなった彼女は、にこっと微笑みくるりと俺に背を向けた。待ってほしいと、自然に出てしまった俺の手は、彼女の細い手首を掴む。不思議そうな表情で俺を見つめるその顔に、ボッと体中が熱くなって、雷門のキャプテンはいつもこんなに熱いのかな?なんて、一つ疑問が生まれた。「何ですか?」あー、もう止めてはしまったものは仕方ない。勇気を持って、彼女に一言。







「その…良かったら、名前…教えてくれませんか?」












一目惚れでした






バスに戻ると、案の定みんなは待たされたと不機嫌な顔。でも、俺はそんなことどうでもよくなるくらいに幸せな気分だから、適当に謝り、雷門を出て帝国へ。…源田に感謝だな。











(源田)

(何だ)

(ありがとな)

(……?)









end












甘く書けてたら良いなぁ。お題は緋桜の輝き様より。


岡田理紗

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