短編2
□希望と絶望と切望
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(千鶴と風間)
犬のように這いつくばりもれる息を殺す。
逃げたい逃げたい。ここから逃げたい。
そればかりが頭に浮かぶ。
「足の腱を切った」
そのとき男の声が響く。
「それでもまだ這い、逃げようとするならば次は腕」
男の手が腕を撫でる。
「それでもまだ言葉で俺を否定するならば次は口」
男の唇と私の唇が合わさる。
「それでもその瞳で俺を睨もうものならば…」
男の唇が鼻を沿って瞳にいき、そして舐める。
「今度はその眼球、えぐり出してくれよう」
ここから逃げられぬ状況を理解したとき、もう既に男は狂っていた。
愛に溺れた男
この牢獄から出るとき、
それはきっと死。