短編2
□反比例
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(斎藤)
浪士と戦った。斬った。殺した。
いつもと変わらぬことなのに、最近は、違う。
(…俺はどうしたのだろう)
血に濡れた刀を見下ろし考える。
あぁ月が綺麗な夜だ。血が妖しく光るその様は、本来はおぞましいもの。そう本来はおぞましきもの。おぞましい。
(…罪の意識か?今更?いや違う…)
だがこの変化が千鶴が及ぼすものなのは確か。
人を斬る刹那に香る匂いと笑顔の残像そして優しい声。
(……今更、人を斬らぬなど…)
出来るはずがない。
夜が、ふける。
愛を知った獣
愛を知れば獣は弱くなる
人は強くなる