短編3
□手料理
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妻の手料理は美味い。
それはそれは美味だ。
「…」
「ど、どうですか?いつもと違う味付けにしてみたのですが…」
今日に限っては、うん、なんとも言えぬ味になっていた。
風間千景は考える、さぁなんと言うべきか。
そもそも自分を満足させたくて、熱心な妻は料理の味を変えたのだ。
昨日の飯は美味かったが、しいていうならば「もう少し塩辛くても良い」なんて言うんじゃなかったと後悔する。
今はもう過ぎたことだが。
「…そうだな」
「やっぱり、ちょっと塩辛すぎました…?」
あぁ、しかし。
あの我が妻の上目づかいを見て何が言えるのか。
褒め言葉しか思いつかないのは何故か。
「…」
「千景さん…?」
しかし、ここで偽りを言って妻が喜ぶか。
存分悩むべきところである。
まぁしいて言うならば…
(…もう少し、甘くてもいいかもな)
(……そう、ですか…次は頑張りますね)←しゅん
(……)←食べ続ける
(……あの千景さん、お口に合わなかったら無理して食べなくてもいいですよ?)
(…いや、食う)
(千景さん…)