短編

□RUN!
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(千鶴と斎藤)





ぶぉっと吹く強い秋の風。

その風に負けずに走ってくる悪魔。




「さ、斎藤さん!後ろから来ました!」

「急かされずとも分かっている」



しゃー、と音をたてながら自転車をこぐ斎藤。

その斎藤の背中にしがみつきながら千鶴は後ろを気にしながら慌てた声を出す。




「どこまで逃げるのですか?」

後方には怪しげなクスリを片手にかかえ、自転車の速さに走りでついてきている悪魔こと山南が。

眼鏡は逆光で表情は伺えないことが更に恐怖を煽る。



「集合場所は平助の家か?」

「はい!そこでみんなとおちあうはずなんですけど…さ、山南先生、しつこいですね…」

「距離はどのくらいだ」

「10mくらいかと…」

「余裕だな」



ふん、と鼻をならしペダルを強く踏む。

その途端ぎゅんと上がるスピード。



「わっ…、それにしてもいいんですか?先輩」

「何がだ」

「その、先輩もサボりなんて…」

「それを言うならお前もだろう」

「…まぁ、そうですね」


お互い結構真面目な生徒だと有名だというのに。

ふふ、と千鶴が笑えば斎藤も微かに笑う。

…と、同時に響くの悪魔の笑い声。



ふふふふふふふふふふ……




「…先輩、山南先生が笑ってます」

「…急ぐぞ」

「はい」


後ろに怪しげな雰囲気を感じつつ、斎藤は更に強くペダルをこぎはじめた。


















Escape


さぁ逃げろ!

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