短編
□虚ろの記憶
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(千鶴と天霧)
貴方は忘れてるのでしょう、きっと
そう呟くと、もう誰もいない教室を見渡す。
茜色に染まりつつある教室に音はなく
ただ天霧の声だけが響いた。
「忘れている…?何をですか?」
「…いえ、何でもありません。ただの世迷言です」
少し。
彼女が覚えているんじゃないか。
そんな期待を込めていったのだが。
やはり彼女は覚えていなかったらしい。
心に寂しさと虚しさが残った。
きおくのだんぺん
しかし最後に彼女は言った
「天霧さん、さようなら」
天霧せんぱいではなく、天霧さんと言った
それは無意識かわざとか
笑う彼女は計り知れない