短 編

□■君がいるだけで
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放課後、愁は教室で恵夢が帰ってくるのを待っていた。
しばらく待っているとドアが開いた。
「恵夢……っ!」
ドアの方向を見ると、恵夢と女子がやって来た。
「愁…どうしたんだ?」
「恵夢、待ってたんだ」
「…何か話でもあるのか?」
「う、うん…
あのさ…なんでそんな急に話するようになったの…?」
すると、恵夢は愁を睨んだ。
「お前がそうしろって言ったんだろ」
愁は恵夢の鋭い目付きと声にビクッとなる。
「そ…そうだけど…」
黙り込むと、恵夢の周りにいた女子達が愁の方に寄ってきた。
「ちょっとアンタ、さっきからなんなの!?
アンタ、恵夢君の幼馴染みだか何か知らないけど、ウザイのよっ!」
「そ−よ。
周りをウロチョロして恵夢君が迷惑してるのがわからないのっ!?」
「え…?」
「恵夢君、アンタに合わせて相づち打ってるだけじゃない!」
「アンタ、邪魔なのよっ!」
「――………っ!」
それを聞き、愁は何も言えなかった。
その通りだと思ったからだ。
「…あ、えと…恵夢…ごめん…。俺、迷惑なのに…」
その時、恵夢は壁を蹴った。
(やっぱ恵夢、怒ってる…!)
泣きそうになるのを堪えながら、愁は俯いた。
すると、恵夢は女子の方を睨みながら怒鳴った。
「俺は迷惑だなんて思ったことない。
愁の事、何も知らねぇくせに知ったような事言うな!!」
「…恵…夢…?」
(普段、滅多に感情を表に出さない恵夢が怒った…)
女子達は恵夢の怒鳴り声にビクッとなった。
「愁、帰るぞ」
恵夢はいつも通りの無表情の顔になると鞄を持ち、愁の手を引っ張っていった。
愁は握られている手を見つめながら、ポツリと呟いた。
「恵夢…ごめん…」
すると恵夢は振り返り、立ち止まった。
「なんで、愁が謝るんだよ…」
「だって……」
黙り込む愁に恵夢はデコピンをした。
「暗い顔なんて愁に似合わないぞ。
いつものように馬鹿みたいに笑ってろ」
そう言いながら、愁の頬をつねった。
「なっ…馬鹿って…ひどぉ〜…」
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