□君といる日の幸せ
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「蔵は誕生日プレゼント何がよかと?」


4月13日の21時43分、夕飯を食べ終え風呂へ行く支度をしている時にふ、と千歳がそう言った



「…別に誕生日プレゼントなんていらんわ。小学生やあるまいし」


一瞬止まってしまった手を動かしながら素っ気なくそう答える

あと2時間と17分もすれば俺は15歳になる
平日にも関わらずこんな時間までこの部屋にいるのは千歳がどうしても俺に一番におめでとうを言いたいから、となんともバカップルらしい理由だ



「えー…いらんなんて言わんでほしいばい。蔵んためなら何でもあげるっちゃよ?」


「やからそないしてくれんでもええて。俺今さほど欲しいもんあらへんし」


困ったように握られた手を優しく振り解きながら興味なさそうに言う






小学校五年生の4月14日、ワクワクした気持ちを抑えきれずに両親に『今日俺誕生日なんやで!』と言ったような気がする

当時の俺は周りの全てに興味を持っていて、すごく誕生日プレゼントに悩んでいた

悩んで悩んでやっと決めたプレゼントが今日、自分の誕生日に手に入ると思っていた

それなのに


『蔵ノ介ももう大人やね。プレゼントなんかいらんやろ?』




その年から俺は誕生日に祝ってもらうことをやめた

大人はみんな自分の誕生日なんて一々報告したりしない
自分も大人にならなくては、
そう言い聞かせて気がつけば俺の誕生日を祝うのは謙也だけになっていた



「…ら、…蔵っ!!」


大きな声にハッと顔をあげると千歳が心配そうに覗き込んでいた

どうやら結構長時間考え込んでいたらしい


「あ、いや、なんでもないで。ほな俺風呂いってくるな」



千歳はまだ不服そうにしていたが小さな声でいってらっしゃいを言ったので俺は風呂に向かった








* * * *

プレゼントなんかいらない
自分は大人だ
祝ってくれなくてもいい
誕生日なんて本当かどうかもわからない一年の中のたった1日だ
別にこの日でなければ、というわけではない



今までずっと押し込めてきた感情が湧き上がってくる



本当は祝って欲しかった
子供だろうが構わない、おめでとうって言ってもらいたかった
毎年誕生日の報告ができる謙也が羨ましかった





「…結局俺は子供のままやん、、、」

はぁ、と溜め息をつきながらも今更千歳に「祝って」なんて言えない後悔に心が沈んだ






*




「蔵ぁ、出たとよー」

あのあと風呂から出て多少ギクシャクしたまま(俺だけやけど)少し千歳に昔の誕生日の話をした

頭を撫でながら黙って聞いていてくれてそれが心地よくて気がついたら眠ってしまっていたらしい



「ん…ちとせ、もう風呂はいったん?」

「おん。蔵が寝ちゃってからすぐ入ったばい」

「そっか………え、今何時!?」



千歳の言葉にバッと体を起き上がらせる


「まだ11時半ばい。まだ14日にはなってなかよ」

千歳に言われ、安心のあまりバタッともといた場所へ寝転ぶ

「よかった…」

「………」

「千歳?」


急に黙り込んだ千歳に首を傾げて名前を呼べばいきなりだけど優しくぎゅっと抱き締められた


「蔵……」

「ん、どないしたん?」

「俺やっぱ蔵の誕生日祝いたか」

「え…」

「さっきの蔵ん話ば聞いとって蔵は無理に感情押し殺しとんのかと思った。ばってん、理由がなかけん確信は持てんかった」

「千歳…」

「やけん、今ん蔵の反応ば見っと蔵はやっぱ誕生日んこつ意識しとるみたいばい。」

「………」


千歳の言葉に反論することができない
さっきのとっさの行動がそんなことを気付かせてしまったのか
「蔵。俺はこれから先10年も20年もずっと蔵ん誕生日ば祝いたか。やけん、蔵も俺には祝われて?思いっきり甘えてよかよ?」

耳元で優しい声音で話す千歳にドキドキしながらも不安になる

本当に甘えていいのか

千歳に面倒くさい奴と思われないだろうか


そんな不安がグルグル渦巻いても千歳に甘えたい、祝ってもらいたい、という思いは止められなかった

「俺…も、千歳に祝ってもらいたい……おめでとうって言ってほしい……」



恥ずかしくて俯きがちに言えば抱きしめられる力が強くなった

「うん。蔵が満足できるように精一杯祝わせてもらうばい」


甘い声に抱き締められたままゆっくりと押し倒され時計の長針が真上を指した瞬間俺達は唇を重ねた



HAPPY BIRTHDAY 蔵ノ介!!











白石誕生日遅れてごめんね!!これからも千歳と四天メンバーみんなに愛されてね!!←

 

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