小話

□愛、哀、アイ
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薄暗い部屋の中、人斬り二人の荒い息遣いと粘着質な音が響く。

「ぁ、はッ」

目元を紅くし、口の端を唾液が伝い、

苦しそうな表情を浮かべ小さく喘ぐ万斉を、似蔵は見えない目で静かに見つめる。

がり、と血が滲むほど強くその細い首に噛み付けば、背中に爪を立てられた。

「ぃ、た、やめ…ろ…」
「好きだろう、こういうの」

万斉の首から滴る甘い血の匂いに酔いそうになる。
きっと自分に犯されているこのクソ生意気な人斬りも、今はそれはそれは可愛い顔をしているに違いない。

音を立てて血を吸うと同時に強く奥をついてやればほら、苦しそうな声で喘いでくれる。

「ひ、ぁあッ、ん、ぅ…っ」
「気持ちイイかぃ?」

それとも苦しい?
辛い?
痛い?

苦痛に歪んでいるであろうその顔を、直に見れないのが残念だ。

ゆさゆさと好き勝手に揺さぶるとがりがりと背中を引っ掻かれる。
万斉のその首と同じように、自分の背中にも血が滲んでいるんだろう。

「地味に痛いんだがね」
「し、ね、変態。男相手に、盛って」
「あんた人のこと言えるのかい」

万斉の足を持ち上げ、肩に乗せる。
更に深く繋がったそこに、万斉は悲鳴にも似た声を上げる。

そうだ。
自分は万斉相手に欲情している。
こんなクソ生意気で可愛くない、しかも男であるこのガキに。

理由なんてモノ、考える方がおかしい。


「ぉ、かだ…ッあ、ん…っぜ、ったい、ころ…す」
「…っく、」


ただ狂ってるだけさ。


「逆だよ、」
「ッ、あ」






(俺があんたを殺すんだ)






end

 

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