小話

□はじめての。
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『誕生日おめでとう』



今日は、色んな人からその言葉と共に色んな物を貰った。



晋助からは拙者が前から欲しがってたCD
来島からはブレスレットと……何故か日焼け止め
坂田からは苺のポッキー

…などなど。
他にもたくさん貰った(中にはおかしな奴も混じっていたが)

考えてみれば初めてだった。
こんなに大勢の人から誕生日を祝ってもらったのは。

今まで人とあまり関わらないようにしていた、拙者が。



『お前、変わったな』


そういえば前に一度、晋助に言われた事がある。
以前より纏う空気が柔らかくなったと。
以前より笑うようになったと。


――坂本と暮らし始めた日から、少しずつ。



「……ぬしのおかげか」


ソファーで爆睡している坂本を見て、笑う。
確かに、自分は変わったかもしれない。



くしゃ、と坂本の頭を撫でる。


「ん……」


坂本は小さく声を洩らし、目を開けた。



――せんせい
せんせいと会った日から、少しずつ自分は変わりました。
ただただ無音だった世界に、せんせいが音を運んできました。
ただただ無色だった世界に、せんせいが色を付けていきました。
何もなかった世界が、あっという間に色んなモノでいっぱいになりました。

そこで、初めて人を愛しました。

初めて、愛される幸せを知りました。


――普段は素直に言えないけれど。


「……万斉くん」
「…ぬしには、感謝している」


坂本を見つめ小さく呟けば、大きくて温かい手が拙者の頭を撫でた。


「今日は、おんしの誕生日じゃろ」
「さか、」
「万斉くん」



――こちらこそ、ありがとう



『誕生日、おめでとう』



「生まれてきてくれて、ありがとう」







(そんな事を言われたのも初めてで)
(うっかり泣いてしまった)




!!HAPPY BIRTHDAY!!
    !!河上万斉!!



 

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