夢
□満たされた笑みで
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苦しいと、
その目が訴えていた気がした。
「……」
『あ、あの……』
「……バトルか」
『は、はい!お願いします、レッドさん』
バッジも16個全て集めて、ようやく来れたシロガネ山で。私はずっと憧れだった、レッドさんに出会えた。
最強のポケモントレーナー。一人で、R団を解散させた人。
そんな、伝説みたいな人。……旅を続けるうちに、いつか、戦いたいって思うようになってた。
「……ピカチュウ」
『お願い、メガニウム』
夢が叶った、って言ったら大袈裟かもしれないけど。それくらい、私にとってこのバトルは嬉しい出来事だった。
……はず、なのに。
「……」
どうしてかな。勝てる気がした。
……否、勝たなきゃいけない様な、気がした。
目の前にいるレッドさんの目が、何もうつしていなかったから。何だか、苦しそうだったから……
レッドさんは強くて。私のポケモンは何体もやられちゃって。
それでも、諦めずに戦った。勝ちたいって思いが、私やポケモンたちに力をくれた。……そして。
「……!」
『勝っ……た?』
最後にたっていたのは、私のポケモンだった。
『勝った……!勝ったよ、ありがとう!みんな!』
レッドさんをよそに喜ぶ私。手持ちの皆も、すごく喜んでいる。
暫く感動に浸っていると、突然レッドさんが私の横を素通りして行った。思わず、声をかける。
『あっ、あの……!』
振り向いたレッドさんの赤い瞳は、ちゃんと私を映して。輝いてる様な気さえ、した。
『ありがとう、ございました……っ!』
「……名前、」
『え?』
「お前……名前は何て言うんだ?」
いきなりのレッドさんの問いに戸惑いながら、私は自分の名を告げる。レッドさんは、私の名前を小さく呼んで。
『はい?』
「……ありがとう」
満たされた笑みで
(レッドさんは笑った)
(私も笑った)
(もう、あの眼は)
(苦しいなんて、言ってなかった)
第一期拍手でした。
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