笛!

□太陽4
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まだかまだかと開花を待ち侘びていた桜も今は既にはらはらと花吹雪で地面に桃色の絨毯を敷いている。


今日は待ちに待った始業式。不安が募るクラス発表だ。



「陽菜ー!」


『真里、おはよ。』


「おはよー。クラス割もう見た?」


『いや、まだ‥‥ぐぇっ。』


真里が背中から抱き着いてきた。私より背の低い彼女が私の首に腕を回して抱き着くと自然とのけ反った姿勢になってしまい何とも言えない声が漏れる。


『ま、真里‥‥』


「見るの嫌だなぁ!陽菜と別れたくなーい!」

話を聞いてください、真里さん。

『あの、ぐるじ‥‥』


ギブギブ!と回された腕を叩けばぱっと肺に空気が満ちる。


『さて、見に行くか。』


空気の有り難さを痛感しながらクラス表が張り出された場所へと向かう。


「あっ、陽菜!薄情者ぉ!」


そう私に投げかけるも追い掛けてくる真里。












─────‥‥‥‥‥‥



『ま、真里?』



クラス表を見て、真里の周りの空気は澱んでいた。



「陽菜!あんたなんでそんなにすかしてるのよぉー‥‥クラス別れちゃったのに!」


薄情者!!とぽかすかと肩を叩いてくる。いやあの真里さん、君の腕力って君が思ってる以上に強いから。痛っいたたっ!


『そりゃあ寂しいけど、まだ隣のクラスじゃない。遊びに行くから。』


「ぜーったいね!」


そう念押しする真里の形相はもうとてもじゃないが言葉で言い表せないよ。


「じゃ、また明日!」


『うん。部活頑張って。』


「ありがと!」












真里とも別れ、引っ越したおんぼろアパートに向かう。前の家と比べて学校から近くなり、通いやすくなった。


さて、明日は入学式。佐藤成樹くんは私を見つけられるのだろうか。

私は見つけられる。あの金髪は中々いないもんね。





私は春の暖かさに心弾ませ、家に帰った。






















──────‥‥‥



チュンチュンと雀が可愛らしく鳴く声が窓越しに聞こえた。カーテンから漏れる朝日に、私は眩しさで顔をしかめる。


『んん‥‥』


もそもそと布団の温かさを噛み締めていたら、突如家の電話がなった。


『もー、朝っぱらから何‥‥。』


渋々布団から這い出て電話をとると、向こうからはお怒りの声。壁にかけている時計を見ると、針は9時を指している。サアっと血の気が引いて行くのが分かった。



『すみません、今から向かいます。』



着いたら職員室に来るようにと言われ、受話器を置く。きっと着く頃には入学式も終わっているだろう。


ああもう、コンタクト入れるのも寝癖直すのも面倒臭い!


私は髪を寝癖が目立たないように結って眼鏡を掛けて慌てて家を後にした。


走って学校に着いたのも9時35分。職員室の扉に手をかける。


『失礼しま──‥‥!』



引き戸を引いて目に入ったのは金色に輝く髪。彼だ。


やだやだ、そんな。こんな面白くない三回目とか。何のために名前を教えなかったか分からない。


私は当分、彼を避ける気だったからだ。


やばい、こっち来る──‥‥!




「おお、荒垣、こっちだ。」


すっとすれ違う。


『はい。』


‥‥あれ。
気づかなかった?
‥‥ま、名前が知りたかったなんてその場限りだったかもしれないし、しょうがないか。



「荒垣、どうかしたか?」


『へ!?いや‥‥』


「まったく、ぼーっとしてるから今日みたいに‥‥」



それから教員の話はだらだらと続き、結局は説教の為に学校に来たようなものだった。

まあ、佐藤成樹くんが見れたからよしとするか。



明日からは通常授業。
一日が長くなりそうだ。









第03話 END


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あれ、シゲ喋ってない‥‥おかしいな。

120328 真宮 瑠榎

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