笛!
□太陽5〜10
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翌日、真新しい教科書を鞄に詰め込んで学校へ行くと、真っ先に真里が駆け付けてきた。
「陽菜ーーー!!」
『おはよ、真里。』
「"おはよ、真里"じゃないよ!」
『え、それ私の真似‥‥?』
「なんで昨日来なかったの!?」
最近人の話聞いてくれないのが真里の流行りなのか私の話をすべてスルーしていく。
『寝坊して。』
「今年の新入生、イケメンレベル高いよ!」
いや聞いておいてその扱い?
『真里、ミーハーだっけ?』
「いや別に。顔だけで好きにはならないし追っかけする暇も労力もないのでね。」
『だよねー。あの真里がまさかねぇー。』
「だから一体陽菜の中の私って何。」
『大和男子』
「性別乗り越えた!?
‥‥ってそんな話じゃなくて。」
駄目だ、ホント真里のノリ好きだなぁ。かけがえのない友人との馬鹿話は、ふと相手への思いが浮かび上がる。
『新入生にイケメンが多いって?』
「そうなの!まぁ、あたしらからしたらまだ小学生抜けたばっかのがきんちょなんだけど。その中にさ、そう感じられない男の子がいてさ。すんごい目立ってたよ!」
ん、もしかしてそれって‥‥?
『その男の子って、金髪?』
「そうそう‥‥って、何で知ってるの?」
やっぱりか。
『いや、寝坊の説教くらう時にすれ違ってさ。』
「多分その金髪のことだよね。全校生徒の前で呼び出されてたもん」
『目立つもんねー、金髪。』
中学生でパツキンとか、勇気ないよ‥‥。
話し込んでいる内に予鈴が鳴り響き、慌ててそれぞれの教室に戻り1限目の用意を始める。
─────‥‥‥
かくりかくりと頭がふねをこぐ。
暖かい気候に相まって、教員のつまらない念仏という名の子守唄。眠たくなるのも仕方がないといっても過言ではない。
窓から覗く空は、清々しい程に青い。
二限目が終わり、私はふらりと教室を後にした。
始業のチャイムが鳴る。
だけど私は教室には居なかった。
眼前に広がるのは青と白。今その綺麗な空を遮るものは何もない。
場所は学校の屋上の貯水タンクの裏。ここは一年の時から使っている恰好のサボり場だ。
ゴロリと寝転び春のまどろみに意識を委ねようとしたその時、開かないはずの屋上の扉の開く音が響いた。今は授業中で人が来るはずのないココ。私は貯水タンクの物陰からその人物を覗き見る。
すると目に飛び込んだのはさんさんと降り注ぐ太陽光に照らされた金。ああ、つくづく彼とは縁がある。柄にもなく本当に運命なんではないかと疑いたくもなるがそんな思考を頭を左右に降って掻き消す。
必然までは信じてやろう。
だけど奇跡や運命だなんて私は信じない。信じられない。
私は彼に向いていた体を再び地面に横たえて少し早い昼寝タイムに入った。
────‥‥‥
夢を、みていた気がする。
ぼうっとする脳内に叱咤する代わりに重い瞼を開いた。
優しい声が私を撫でて、大きな掌が私を包んだ。そんな、心の温かくなるような夢。
コンクリートの上で寝たせいか身体の節々が少しの痛む。腹が少し凹みそうなくらいの適度な空腹感とグラウンドから聞こえるはしゃぎ声は昼休みを示している。
のそりと体を起こして教室に戻る。寝る前にそこに人が居たこともその後ろ姿を見られていることにも働かない頭では気付くことも思い出すこともできずに───‥‥‥
見つけた、愛しい君
(みつけたで、姫さん)
第04話 END
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120331 真宮 瑠榎