青エク夢

□雪の色
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ふと目を覚ますと、朝の5時。いつの間にか寝てしまっていたらしい。暖房もつけっぱなしで室内は乾燥している。



『喉痛い…』



掠れた声が一人の部屋にぽつりと消えた。


『あー…メイクも落としてないし…』


もう、怠いなぁ。気怠い体を叱咤してバスルームに向かう。少し熱めの温度に設定をしてシャワーを浴びる。するとぼやけた脳内が次第に鮮明になってきた。






体の汚れと疲れを落としてさっぱりし、ガチャリとリビングの扉を開ける。…と。












あーらびっくり、イケメン眼鏡くんがソファーに座ってました。











パタリと扉を閉める。
…幻や夢じゃなかったのか。現実だったのか。っていやいやいやいや。私ってばなんて格好してるんだ。一人暮らしが長いせいか、その姿はバスタオルを巻いただけのあられもない姿。ええええええ!?!?急いで自室に向かい服を身につけ、気まずいながらもリビングへと乗り込んだ。




『あの…先程は失礼しました…。』


「い、いえ、こちらこそ勝手に動いてすみません。」


イケメン眼鏡くんは耳まで真っ赤だ。イケメンて初だなんて、なんて希少価値←
さらに声まで爽やかでイケメンボイスだなんて、女泣かせもいいとこだ。


『とりあえず、名前きいていい?』


いつまでもイケメン眼鏡君じゃ申し訳ない。


「あ、奥村 雪男です。もうすぐ16になります。」


えっと、16…?みえないみえない!


『奥村くんね。私は神凪 鞠亜。年齢はー…うん。おばさんの年齢だから想像にお任せする。』


ガチガチに固まっている奥村くんが少しでも緊張が解れるように笑っておどけて言えば、彼も少し笑ってくれた。うん、やっぱりイケメン。でもサンタさん、16歳だなんて私、犯罪者の域なんですけど。






『で、早速本題に入る…前に、奥村くん、熱は下がった?』


昨日はあんなに高熱だったんだ。別に今すぐに話をしなければならないわけでもない。私はとっさに彼の額に手をあてた。昨日ほどではないが、微かに熱い。


「だ、大丈夫です。」


『駄目だよ。薬持ってくるから、それ飲んでから話そう。』



ひっくり返したままの薬箱、散らばった薬剤を目の当たりにしてため息がつい出てしまう。風邪薬だけをよけてほかの薬は乱雑に薬箱に詰め込む。今度整理しよう、うん。


『はい。』


「ありがとうございます、すみません。」


『いいえー。』


16歳にしては、礼儀正しくて大人からみてもほう、と感心してしまう。





『さて、本題に移るけど。体辛かったら言ってね。』


「はい。」


『昨日。私が仕事から帰ってくると、部屋に君が倒れてたの。家の戸締まりはちゃんとしてた。どうして、私の家の中に…?』


「…それが、僕も昨日、任務についていたところ、油断して倒したと思っていた敵に妙な能力をかけられてしまったみたいで…目を覚ましたらもうすでにここの寝室でした。」











ちょっと待て。




『ちょっとごめん。奥村くんって、16歳だよね?』


「はい、もうすぐ。」


『に、任務って…?』


「?神凪さん、僕のコート見ましたよね?高校生もやっていますが、祓魔師です。」


聞き慣れない単語に一瞬フリーズする。


『え、えくそしすと…?』

「はい。」

さも知っているのが当たり前かのように言う彼。んんんエクソシストだなんて映画とかアニメとか非現実世界の話じゃないのかな。いや、私が知らない裏社会のこと…?


「え、と……この世界には悪魔という生物が居ましてそれを退治したりそれらから受けた怪我の処置をしたりする職業で……って、アレ……?」


『ど、どうかした?』


祓魔師について説明してくれていた声が途切れる。


「悪魔がいない…です。この世界……いや、僕の世界では魍魎(コールタール)という悪魔はそこらにどこにでも浮いているはずなんですが…」


『……。』


何がなんだかわからない。私も混乱しているけれどそれ以上に混乱している青年。仕方がない、私が冷静にならなきゃ。私はノートパソコンを持ち寄って電源をつける。


『こーるたーるって、カタカナで?』


「あ…カタカナでも、漢字で魑魅魍魎の"魍魎"でも…」


『了解、っと。』


カタカタと打ち込んで検索をかけると出てきたのは、"青の祓魔師"というアニメ名。公式ホームページをクリックしてキャラクター紹介に進んでいく。



『「え……、」』


画面には、"奥村 雪男"という名前と、今横にいる彼とそっくりなキャラクターが映し出されていた。他にも、彼のお兄さんやお神父さん、友人も映し出されているようだ。………コスプレにしては、似過ぎている。アニメ化にもなっているようで、1話目がおためしで再生できるようになっている。パソコンから漏れだしたのはやはりそっくりというかそのままの声。


「そ、んな……。」


愕然と画面を見つめる彼に、かける言葉がみつからない。



………こんな事ってありえるんですか、サンタさん。、じゃなくて神様…。










(自分の世界が創られた世界だなんて、どんな気持ちなんだろう)
それは、想像を絶する












120124 真宮 瑠榎
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