青エク夢
□雪の色
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馬鹿だ、私は。助けたいと思ってしたことが、ただ傷つけることしかならなかった。まだ16そこらの青年に、こんな、ひどいこと──‥‥。
衝撃的な事実が判明してから数分、沈黙を破ったのは彼の乾いた笑い声だった。
「は、ははは‥‥信じられない‥‥」
そう漏れた言葉は心なしか震えている。
「まさか、僕らが…、…紙、」
『雪男くん』
それ以上はダメだ。言葉にしてしまってはダメ。何だか雪男くんが崩れ落ちてしまう気がした。
『大丈夫だから、』
何が大丈夫なもんか。
私は無責任な言葉を吐いて、彼の頬を両手で包む。真っすぐに視線をあわせ、泣きそうな、でも澄んだ綺麗な青い瞳を見つめる。
手の平から伝わる温度。私は再び口を開いた。
『雪男くんはここに居る。温かいよ。きっと、君のお兄さんたちも居る。作られた世界なんかじゃない。君達が送ってきた日々をなぞって、こちらで描かれているだけ。たとえそれが…時間軸が違っていようと。』
にこり、と安心させるように微笑んだ。
『大丈夫、絶対帰れるよ。君はあの世界に必要だから。私も出来る限り、協力する。』
ね?と少し首をかしげて声をかけると彼は年相応に顔をくしゃりと歪ませた。そうだ、泣けばいい。どんなに大人びてみえたってまだ16歳。まだまだ甘えられる時期なんだから。
そっと雪男くんの背中に腕を回し引き寄せて抱きしめる。震える肩、丸められた大きな背。
なぜかとても、愛おしくてかなしかった。
拒絶して受け入れた
(初めて会ったはずなのに)
(もうこんなにも、)
───────‥‥‥‥
信じられないことが起こった。いや、まだ夢を見ているのかもしれない。信じられない心とは裏腹に、それを受け入れるような言葉が口から漏れだす。
『大丈夫。』
澄んだその声に、手の平の温かさに、抱きしめられた腕の優しさに、耐え切れず涙がこぼれた。
記憶にも薄い母親の体温を思い出せたような気が、ほんの少し、ほんの少しだけしたんだ───‥‥‥。
120810 真宮 瑠榎
短い…