笛!
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『将、お疲れ様!!』
「陽菜ちゃん!お疲れ様。」
お互いにリハビリを終えて談笑する。それが私と将の最近の日課となっていた。彼から聞く桜上水中でのサッカーの話は、とても楽しい。
「で、シゲさんが───‥‥」
『ふんふん、』
今は合宿での話。顧問の先生が作るカレーがみずみずしかったとか、かっこわらい。カレーを不味く作れる方がすごいや。
「でその日にスペースは見つけるものじゃなくて作るものなんだってわかって───‥‥‥」
とても楽しそうに。でも時々寂しそうに話す将。そんな彼を見るに、サッカーはやっぱり空気みたいなモノで、なくてはならない存在だった事と、仲間がとても素敵で信頼できる仲間だったんだと思う。
「で、次は国部二中と練習試合。そこに凄い人がいてさ。俺、ソイツに追いつきたくて、追い越したかったんだ。」
『目標ができたんだ?』
「うん!」
まだ追いついてすらいないけど。そう笑う君。強いな、将って。
話を聞いてるだけで彼の成長っぷり、というか吸収っぷりはすごいと分かる。純粋な彼だからこそ、新しいスポンジみたいに水(技術)を吸い込んでいく。圧迫すれ(試合に出せ)ば、その吸い込んだ水(技術)を発揮する。
『いいなぁ──‥‥私も、将の越えたい人を見てみたいな。』
「あ‥‥!」
『え、なに?』
「会えるよ!」
『は、え、どういうコト?』
「天城くん‥‥あ、今話してた人なんだけど、今ドイツにいるんだ。」
『へー‥‥ぇ、そうなの!?』
「うん。よくお見舞い来てくれるよ。多分、今日も来るって言ってたけど…会ってみる?」
『いいの‥‥?』
「もちろん!陽菜ちゃんが嫌じゃなければ。」
『ううん、あいたい!将の目標の人に!』
「あははっ。見るとお前が追い越せるわけないじゃないか、っておもうかもしれないけどね。」
『馬鹿!気持ちで負けちゃダメよ!』
「──‥‥うん、そうだね。」
ふわり、と彼の微笑んだ顔に、ドキリと胸が高鳴った。なんだろう、これ…?まぁ、いっか。
それから、昼食後将の病室へ行くことを約束して別れた。
大して美味しくもなければまずくもない(こんな事言っちゃ怒られるけど)病院食を食べ終えて将の部屋へ向かう。もう松葉杖も3週間目に入り、大分慣れてきた。最初は中々慣れずに部屋に篭りっぱなしだったけれど今では車椅子の時と比べて屋上やら中庭やら行動範囲が広がった。
将の病室のドアをノックすると、中から返事が返ってきた。ドアを開けると、そこには背の高い男の人と、可愛らしい女の子がいた。二人の身長は対照的だけど、色素の薄い髪色はそっくりだ。兄妹、かな?