笛!

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昨日、陽菜ちゃんが気を失って、彼女の部屋から追い出された俺は、心配で気が気じゃなかった。


サッカーができなくなってしまった上に母親の訃報。そんか陽菜ちゃんの様子を見に、彼女の部屋を訪ねるも、ドアの前にぶら下がった面会謝絶の文字に、虚しくも自室に引き返さざるを得なかった。


──でも。

会えたとしても何て声をかけたらいいんだろう。彼女がなくしたものを持っている俺が軽々しく励ましの言葉をかけてしまってもいいのだろうか。


「将くん、検温の時間ですよ。」

「あ、はい。」


小さな不安を、胸の奥で感じた。
どうか彼女の笑顔がまた見れますように。そう強く思った。
























カーテンから差し込む光。
世界に昨日は捨てられて今日がやってきた。


──‥‥新しい今日。
──‥‥新しい…?








         イラナイ









サッカーが出来ないなら。それを支えてくれてた人がいないなら。
私は今日なんていらない。明日なんてイラナイ。こんな足、要らない。痛みだけをうむこの憎い足。







私だけを取り残して、時間は進んでいく。




「陽菜ちゃん、食事は摂らないと‥‥」


『いらない。食べたくない。』


「ほら、体に悪いから。」


『知らない。いらないってば。』




運ばれる食事に手を付けず、人と会うことさえも拒絶した。こうして世界から見放されることを理解しながら。

食事と人を拒絶してから三日。控えめにドアがノックされる音が聞こえた。


「陽菜ちゃん、将だけど…」




将‥‥太陽みたいに笑う人。


『ごめん、そっとしておいて。』






ごめんなさい、あなたは私には眩しすぎるの。











「また、来るね。」


そう、人の気配が遠ざかっていった。


馬鹿。仲の良かった将まで拒絶して。───‥‥でも、輝く彼といると自分の悪いところが際立って感じてどんどん皮を剥がれて醜い私の姿を晒されていく気までする。
















 私がケガをしなければ。
 私がドイツに来なければ。
 私がサッカーを諦めてたら。
 私があの時お母さんと日本に帰っていたら。















 私が今、ここにいなければ。















私がサッカーをし続けたから。私がドイツに居続けたから。私がボールを蹴ったから。


…お母さんが死んだのは、ワタシノセイ…???










海上での墜落に、母の骨は海の底へ葬られた。冷たかったよね。苦しかったよね。辛かったよね。ごめんなさいなんて陳腐な言葉言えない。言っても許されるような罪の重さじゃ、ない──‥‥。




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