For you ...

□ちょっと心配だから
1ページ/2ページ


「シンク、元気?」

「あっ、シンク!」

「シンクは仕事中かぁ…」

「シンク大丈夫?」

「お腹空いてない?シンク」

「ねぇシンク」

「…シンク?」

「シンクったら――」

シンクシンクシンクシンク…

自分の名前だってのに、こうも耳障りなものに聞こえるのは、多分、初めてだ。
すべては全部、あんたのせい。

「…あのさ」

「なぁにシンク?」

「うるさいよ」

思わずぶっきらぼうに言った。
あんたは面食らったような顔で僕を見る。すぐにまた呑気な顔に戻るんだけど。

「毎度毎度、口を開けば僕のことばっかり…。他に言うことないの?」

「えー…?ない」

即答された。
…あんた、バカ?

「…何よー、そのバカっぽいヤツを見る目は」

「他にどんな反応ができるのさ」

「失礼な。シンクがちょっと心配なだけ」

あんたは両手を腰に当てて、不機嫌そうに僕を睨む。
『ちょっと』でコレなら、あんたはかなりの過保護だね。

「好きな人が自分の目の前にいる限り、もし元気じゃなかったら悲しいじゃない?」

あんたの言葉に、一瞬だけ時間が止まったような気がした。
目の前には、いたずらっぽいあんたの笑顔。
僕は半分本気、半分はわざとらしく、ため息をついた。

「…その人はあんたに振り回されて疲れるんだけど」

「大丈夫。疲れさせないように、心配するから」

へたくそ。僕はもう十分疲れてるよ。
でもあんたの笑顔の前では、何も言えない。

僕はただ、無言であんたを見つめるしかできなかった。

.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ