原作設定シリーズ

□意地っ張りからのプレゼント
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そして来る12月24日、クリスマスイブ。



その日は朝から雪がさんさんと降り積もっていて、夜になると景色はすっかり真っ白に染まっていた。

普通なら見事なホワイトクリスマスだと舞い上がるだろうが、百華の面々にとっては、ただ単に仕事がやりづらくなるという事実以外に何の意味もない。



そして予想通り、その夜は嵐の如く立て続けに事件が起きていた。

主に酔っぱらい同士の喧嘩であったが、中にはクリスマスというのに別れ話に発展してしまったカップルの仲裁、独り者のオヤジの愚痴聞き、イブに最後の望みをかけた男達のナンパなど、思わず「知らんわ!」と叫んでしまいそうなハプニングもあり、本当にこれが百華の頭としての仕事なのかと疑問が浮かぶ。




やっと吉原が落ち着きを取り戻すのは、もうすでに太陽が空へ昇り始める頃だった。




疲れた・・・・・・



先ほどとは打って変わって静まり帰った繁華街をおぼつかない足取りで歩く月詠は、もはや死人とあまり変わらないと言っていい。




このまま家に帰って、一旦仮眠を取ろう・・・



早く布団にもぐりたい。

その気力だけを頼りに鉛のような足をなんとか前へ進める。

と、その時。




「お!頭じゃねーか!お勤めご苦労なこって!」



死にかけのテンションの月詠とは正反対の陽気な声がかけられた。

声の方向に振り返ると、以前銀時と訪れた甘味屋の店主が店の前でにこやかに手を振っている。



あの時の銀時のあまりに良い食べっぷりが印象強かったらしく、この主人とはすっかり顔なじみになってしまったのだ。



「何だ何だ!今にも昇天しそうなツラしやがって!」


「・・・元気そうじゃな。頼むから今そのテンションで話しかけないでくれなんし。疲労が二倍になりそうじゃ。」


「へっ。百華の頭ともあろう女が情けねえ!そんなんじゃ無事に子供も生めやしねーぞ!うち寄ってけ!とっておきの疲労回復ジュース振る舞ってやる!」


正直そんな元気もなかった月詠だが、店主に強引に中へ連れられてしまったため、仕方なく一杯だけ付き合うことにした。

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