原作設定シリーズ

□女を捨てて
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時は二月上旬。

冬は順調にその勢力を増し、かぶき町の住民達が忙しなく寒さ対策をし始めた頃。



俺は一体何をしているかというと・・・



「何してるアルか銀ちゃん。」


「のわああ!?」



イキナリ視界の下から聞こえてきた声に、不覚にも間抜けな声を出してしまった。このくそガキめ。人が考え事してる時に話しかけてんじゃねーよ。



「銀ちゃん、最近ずっと険しい顔してるアル。何かあったアルか?」


「何でもねーよ。ガキはクソして寝てろ。」


「レディに何てこと言うアルか。私はウンコもオナラもしないアル。ケツの割れ目もないアル。」


「いやどこのアイドルだよ。
・・・つーか今めんどくせーボケかますな。銀さん今ちょっとデリケートな時期だから。ほっといてくんない?」



目の前のチャイナ娘はまだゴチャゴチャとうるさかったけど、マジで俺はそれどころじゃない。てゆーか・・・



今ものすげー不機嫌なんだよオオオ!!



何故かってそれは、ちょうど二週間前まで遡る。




*******************








「話とは何じゃ。」


「いや〜・・・話っつーか・・・」



俺は、吉原の中にある甘味屋に月詠を呼び出していた。



あのクリスマスの一件から一ヶ月間。

あらぬ気持ちを気付かされてしまった俺は、悶々とした生活を過ごしていた。




自覚する前まではそんなことなかったのに、この無表情サイボーグ女に会いたくて仕方なかった。



今まで会ってない期間、どうやって過ごしてたっけ?と疑問に思ったくらいだ。



『そんなに会いたいなら意地張ってないで会いに行けばいいアル。』



俺の落ち着かない様子を見兼ねた神楽から、呆れたようにそんな台詞が吐かれたのをきっかけに、ついに我慢の限界がきた俺は月詠をお呼出しした訳だ。

・・・けど。




「・・・・・・」


「・・・えーと・・・」


「・・・・・・」



月詠さんの態度がおかしいです。

さっきから目線も合わせようとしないで、ずっとそっぽ向いてひたすら紫煙を吸ってます。

いつも無愛想な奴ではあるけど、今日は何つーのかな…明らかに俺と向き合うことを避けてる。


・・・俺、何か怒らすようなこと言ったっけ?




「・・・あの〜・・・そんなあからさまに不機嫌になられたら、こっちも話しにくいっつーか・・・」


「……」



イヤ返事しろよォォォ!!



…とか言いたいけど、この重苦しい空気の中ではさすがに言えない。

どうしたもんか、と沈黙に身を任せてたら、



「…話をする気がないなら帰る。」



月詠が席を立って、その場から去ろうとした。



「ちょ!待て待て!!」



慌てて月詠の肩を掴んで引き止めた。

けど、相変わらず月詠はこっちを見ようとしない。



「・・・お前、どーしたの?今日おかしいぞ。」


「・・・銀時。」


「・・・何」


「・・・もう、わっちの前に姿を現すな。」




え?




一瞬理解出来なくて、固まってしまった。




掴んでいた肩を思わず離して、渇いた喉から何とか声を出そうと試みる。



「何、言ってんだよ…」


「……」


「あ、オイ!!」



月詠は俺の質問には答えず、颯爽とその場を立ち去ってしまった。



ホントは追いかけるべきなのに、さっきの月詠の言葉が頭の中をエコーみたく駆け巡っていて、出来なかった。










…という事態が二日前にあった訳で。

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