原作設定シリーズ
□女を捨てて
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「意味わかんねぇ・・・ホントに意味わかんねぇ・・・」
つーか何だよイキナリ『姿を現すな』って。
もう会いに来んなってことか?
…あ〜〜〜〜〜またイライラしてきたァ!!
「くっそ!!馬鹿馬鹿しい!もう俺ァ知らねーぞあんな女!!」
「ちょっと銀さんさっきから独り言うるさいんですけど!」
「ウゼーのはテメーのメガネだよ!!」
「えええ八つ当たりィィィ!?」
八つ当たりでもしねーとやってらんねーよもー!!
「お邪魔しまーす!銀さーん!」
と、その時玄関先から聞き覚えのある声がした。
ふと目をやると、そこには晴太が立っていた。
「晴太!久しぶりアルな〜!」
「へへ!今日は久しぶりにバイトが休みだから、遊びに来たんだ。」
「晴太くん、何か少し見ない間に大きくなったんじゃない?」
「当たり前アル。育ち盛りアルヨ。そのうち新八のことなんて追い抜くネ。」
晴太の声を聞きつけたらしく、神楽が押し入れから出てきて、久しぶりトークに華を咲かせる。
その会話を何とはなしに聞いてたけど、
「そういえば、月詠さんと日輪さんも元気?」
新八が発した台詞に、思わず耳を傾けてしまった。
「あぁ、母ちゃんは元気だよ。相変わらず人使い荒いし。でも月詠姐は・・・」
「ツッキー?何か・・・」
「アイツ何かあったのか?」
神楽の言葉を遮って思わず過敏な反応をしてしまった俺に、晴太は少し驚いたようで。
戸惑いながらも俺の質問に答えた。
「う、うん・・・何かあったっていうか・・・最近の月詠姐、変なんだ。」
「・・・変?」
「ここ毎日、働き詰めでさ・・・いつも以上にがむしゃらに仕事してる感じなんだ。危険な仕事も全部一人でやろうとしてて・・・母ちゃんが止めても全然聞かなくて。・・・オイラには、まるで何かから気を紛らわそうとしてるように見えるんだけど・・・。」
「・・・・・・」
「それでこの前、吉原に妙な浪人が入った時、一人で無茶して・・・結構深手の傷を負っちゃったんだ。さすがに今は家で休んでるけど・・・見てて痛々しくてさ・・・」
晴太の話を聞き終わって、俺は二週間前のアイツを思い出していた。
変だった。確かに。
でも、そうだ。思い出した。
表情は見せなかったけど、アイツの肩は少しだけ震えてた。
「…仕方ねぇな。ちょっと行って喝入れてくるか。」
なるべく何でもないように振る舞いながら玄関へと歩いて行くと、
「銀ちゃん。」
背後から神楽の声をかけられた。
「…弱ってるツッキーをイジメたら承知しないアル。」
「そうですよ。また喧嘩なんてして帰って来たら、家に入れませんからね。」
「…わーってるよ。それから忘れてるみたいだけどココ、俺んちだからね。」
俺の考えてることがわかったのかそうじゃないのか、二人はついて来ることはしなかった。
その珍しい気遣いに感謝しながら、俺は吉原へと向かった。