企画物

□隣で笑って、いつまでも
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自宅へと帰る道すがら、銀時が左手の腕時計を見た時には、既に時刻は深夜の12時を指していた。



「くそ・・・何で今日に限って残業になんだよ・・・っ」



死ねクソハゲ、死ね、と、誰に対してでもない呟きを年甲斐もなく漏らしながら、足は自宅へと急ぐ。



この日、銀時は定時で仕事を上げる予定だったのだが、職場で予定外のトラブルが発生し、その処理を任されてしまった為に、その予定は一瞬にして崩れてしまった。

そんなん知るかボケェェェ帰らせろ!!と強く言いはってみたものの、銀時の気を知る由もない上司にその叫びは届かなかった。

その瞬間、いつかこのハゲの鼻の穴にネギツッコんで復讐してやる、と心に刻んだ銀時である。



怒りに任せて夢中で歩を進めていると、漸く自宅マンションの前にたどり着いた。



「・・・さすがにもう寝てるよな・・・」



ボソリとそう呟き、現在恋人と同棲中である5階の角部屋に視線を上げた。



数時間前、残業が決まった銀時は恋人である月詠に電話でその旨を伝えていた。

先にメシ食って寝てていいから、と泣く泣く告げると、月詠はわかった、と素っ気なく返してきたが、その声色はいつもより少しだけ沈んでいたように聞こえた。

当然だ。朝の時点では『今日は早く帰れるから一緒にお風呂入ろっか♪』等とふざけたことを言っていたというのに、それが突然泡のようになかったことになってしまったのだから。(いや、別に月詠が一緒に風呂に入りたかったんだろうとかそういう訳ではなく)



ちなみに俺は一緒に風呂入りたかったぞチクショー!と阿呆なことを考えていた銀時だったが、ふと目に映り込んだ光景に、思わずぱちくりと瞬きをした。



「・・・アレ?電気ついてる・・・」



確かに、見上げた先の5階の角部屋の窓からはオレンジ色の光が漏れ出していた。

銀時がもう一度時計に視線を戻すと、やっぱり時刻は深夜12時。

出勤時間が早い月詠なら、もうとっくに寝ているはずの時間だ。

まさか、と思い、銀時は急いでマンションの階段を駆け上がった。

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