企画物

□天パVSストレート
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ある日、久々に休暇が取れた月詠はかぶき町に訪れていた。

何故ってそれは、どういう訳かいつの間にかうっかり恋人という位置づけになってしまっていたあの銀髪天パ男に会うために。



ここ最近お互い忙しくて会えていなかったため、直接会うのは2週間ぶりというところだろうか。

せっかくなので今日は甘いものでも食べながらのんびりするか、と。

常より軽い気がする足取りで、万事屋へと続く階段を登りながらそんなことを考えた。



しかしそんな月詠の密かな楽しみは、万事屋の扉を開いた瞬間に打ち消されることになった。



「ちょっとォ!!銀さんイキナリ何すんですかァァ!!」


「ふははははは死ね!!!」


「ちょっマジで離し・・・ぎ、ぎゃあああああああ!!!」



「・・・・・・・・・」



月詠が万事屋の玄関に足を踏み入れようとしたと同時に聞こえてきたのは、ここ万事屋のアシスタントである新八の悲痛な叫び声と、自身の恋人である銀時の高らかな笑い声。

一体何事だと思い、声がする方向の居間を覗いてみるとそこには。



どういう訳か銀時がジタバタと暴れる新八を背中の上から押さえつけているという、月詠が考えていた『のんびり』とは程遠い光景があった。

そしてその銀時の手には何故か、バリカンが握られている。

そう、無情にも毛を殆ど刈り落としてしまおうという、野球少年必須のあの道具。



どうして銀時が新八の髪の毛を刈り落とそうとしているのだろう・・・



「・・・一体何があったんじゃ?」



どんなに考えてみてもやはり目の前の状況が理解出来なかった月詠は、ギャーギャーと騒ぐ二人を隣で見学していた神楽に尋ねた。



「ほっとけばいいネ。銀ちゃん、床屋に行った後はいっつもこうなるアル。」


「奴は床屋に行っておったのか?というか何故それでこんな状況になるんじゃ?」


「ストレートパーマ断られたアル。」


「ストレートパーマ、じゃと?銀時が?」



神楽が言った予想外の単語を、月詠は思わず鸚鵡返ししてしまった。



「ウン。かぶき町の床屋ぜんぶ回ったけど、どこもお断りだったアル。そしたら銀ちゃん怒って、突然『ストレートヘア撲滅計画』始めたアル。まったく、銀ちゃんの髪の毛のねじれはストパーなんかじゃ直らないから断られて当たり前なのに。アホアルな〜」



そういうことか・・・と、月詠は呆れたような溜息を吐いた。

目の前では新八が必死に抵抗を試みているが、その奇麗な直毛は既に、所々魔のバリカンによって犯されている。



「おい・・・本当に放っておいていいのでありんすか?あのままでは新八の頭が哀れなことになりんすよ。」


「大丈夫ヨ。奴はムッツリスケベだから毛なんてすぐ生えてくるアル。RYO-Uの時も髪の毛剃られてたけど次の週には元に戻ってたし。」


「ちょっと神楽ちゃん何言ってんのォォォ!!?見て!!この状況よく見て!!全ッ然大丈夫じゃねーよ早く助けて!!!」


「オイコラ暴れてんじゃねーよムッツリダメガネ!心配しなくても俺器用だから。銀さんならそのクソ忌々しいストレートヘア、イイ感じにつんつるてんに出来るから。すーぐ終わるから怖くないよ〜」


「だからそれが怖ぇんだよ!!そして僕はムッツリじゃありませんんんんん!!」



月詠が新八の髪の毛を案ずるも、他二人にとっては完全にイジられキャラで定着してしまった新八に、助けの手が差し伸べられることはなく。

このままではさすがにかわいそうだ、と、根っからの善人である月詠は、未だにバリカンを握りしめている銀時に向かって口を開いた。

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