お宝
□15万回のキス
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ここは銀魂高校屋上。
その隅に設けられた喫煙スペースで、銀八は一人煙草を吸っていた。
近年の禁煙ブームにより日に日に喫煙者の居場所は奪われて行き、ここ銀魂高校でも喫煙スペースは年々小さくなり、遂に屋上のこの小さなスペースだけとなって しまった。とは言え、校内全面禁煙となった他校に比べたらまだマシ、というものかもしれない。
今は授業中の為、校内は静まり返っている。 グラウンドから届く笛の音と生徒達の掛け声だけが大きく鳴り響いていた。
「何じゃ、ぬし、来ておったのか。」
振り向かず とも、声の主は知っている。
「そんな事言って、俺の授業の空き時間狙って来てんじゃねぇの?」
笑いながら振り向くと、 思った通り怒りの表情を浮かべて、月詠が立っていた。
「わっちはぬしのように暇しておらぬ。丁度時間が出来ただけじゃ。」
そ んな事、言われなくても良く分かってはいるのだが、こういう反応が楽しくてからかわずにはいられない。そんな銀八の心中を知ってか知らずか、月詠は期待通 り顔を赤くしてそっぽを向いた。
「悪かったって。冗談だよ。」
「・・・ぬしの冗談はタチが悪い。」
「ん じゃ、お詫び。」
言うと同時に、顔を近づけ月詠の顔に軽くキスをする。口を抑え、ぱっと後ろに飛び退く月詠に、銀八は笑いを抑えきれな い。
「こ、こ、校内でするなと言ったろうに。」
「大丈夫だって。誰も見てねぇよ。」
屋上には人が隠れる スペースも無いし、端に立たなければ下から見られる事も無い。そうは分かっていても、月詠は思わず周りを見渡した。
「機嫌治った?」
「治 るか、馬鹿者。」
「あれ?嬉しがるかと思ったのに。」
「だから校内でするなと言うとるんじゃ。」
「な ら、良い事教えてやろうか。」
「・・・何がじゃ。」
「俺は、お前とキスすんの、楽しいけど?」
チラリ、 とこちらを見て嬉しそうに笑う銀八を、月詠は心底ズルイと思う。
その目で見つめられると、抵抗する気など無くなる事、この男は分かって やっているのだから。