原作設定シリーズ
□意地っ張りからのプレゼント
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クリスマスの時期に書いたものです。すいません、もう2月ですがアップさせて頂きました^^;
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12月23日。
世間では「明日はくりすます」なるイベントでどこもかしこもお祭り騒ぎである。
吉原からあまり出ることがない月詠でも、地上で行われるその行事については少なからず知識はある。
最近では吉原に並ぶ数々の風俗店でも、このイベントを売り上げに貢献させようと「クリスマスフェア」を開始する店も少なくはない。
よって、天人伝来のこの浮かれたイベントのことは嫌でも耳に入ってくるのだ。
しかし聖なる夜だからと言って吉原に危険が起きない訳ではない。
むしろ客も遊女も町中にあふれる華やかな装飾に舞い上がり、ついついハメを外してしまいがちである。
したがって、月詠にとってクリスマスという日は無駄な仕事が増えるだけの、全くもって迷惑なイベントであった。
「まったく・・・皆もう少し落ち着きを持ってほしいものじゃな。」
「しょうがないんじゃない?明日はクリスマスイブだもの。大切な人と過ごせるなら、浮かれてしまうのもわかるわ。」
日輪の散歩に付き合いがてら見廻りをしていた月詠は、今年も忙しくなりそうだ、とため息を吐いた。
そんな月詠をなだめる日輪だったが、今まで外に出ることが出来なかった彼女にとっては、いつもより一際騒がしい町の景色がこの上なく嬉しく感じていた。
「私も今年は晴太と過ごせそうで幸せだよ。それもみんな、月詠と銀さんたちのおかげね。」
嬉しそうに微笑む日輪に、月詠も思わず笑みがこぼれる。
「確かに、これだけ吉原が賑やかなのは初めてかもしれん。」
「月詠も一緒に楽しめないのが残念だわ。」
「わっちのことは気にするな。吉原を守ることがわっちの役目じゃ。」
「それは助かるけど・・・あなただって女の子なんだから。いつかはクリスマスを好きな人と過ごしたいでしょ?」
「そんなことを思ったことは一度もありんせん。わっちは日輪と晴太、それに吉原の皆が安全に過ごせればそれでよい。」
相変わらず吉原のことで頭がいっぱいで全く色気のないことを言う月詠に、嬉しい反面、日輪は半ば呆れていた。
だが、今まで女性としての生き方を捨ててきた月詠の頭の中は、百華の頭としての使命がほとんどを占めていて、クリスマスを「恋人と過ごす」などという選択肢は1ミクロンもなかったのである。
「まったく、気づいてないのかしらね、この子は・・・」
「ん?何か言ったか?」
「・・・何にも。」