原作設定読み切り
□コスチュームプレイ
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その日仕事がオフだった銀時は、新八と神楽を連れて吉原に訪れていた。
ひのやへ続く道を三人並んで歩きながら、銀時は何故だか幾分不機嫌そうだった。
「つーかよォ、何でおめーら付いて来んの?せっかく俺が久しぶりに愛する月詠に会いに来てるっつーのに、ちょっとは『二人っきりにしてやろう』という気がきかねーのかガキ共め。」
「だっていつも銀ちゃんばっかりツッキーに会っててずるいアル!」
「そうですよ。それに月詠さんが万事屋に来た時はいつも二人にしてあげてるじゃないですか。っていうか僕等が追い出されてるだけですけどね。」
『その後一体ナニしてるんだか知らないですけど・・・』という新八の訝しげな視線からはあからさまに逃げながら、銀時は口笛を吹いて誤摩化した。
そんなやり取りをしながら、漸くひのやの前へたどり着いた三人。
店先ではいつものように、月詠が煙管をふかしていたのだが・・・
「よう、久しぶりじゃn・・・」
「ぶふぉああああ!!」
「うわああああ!!?」
月詠の姿を見た瞬間、銀時が勢い良く鼻血を出したため、久しぶりじゃな、と挨拶しようとしていた月詠は思わず悲鳴をあげてしまった。
「な、何いきなり鼻血出しとるんじゃ貴様あああ!!」
「いや出すだろォ!!お前のその格好見たら鼻血出すだろォォ!!」
銀時の言う『その格好』というのは、所謂ナース服というものだった。
真っ白でタイトなデザイン、膝上15センチはあるだろうミニスカート丈、頭にはナースキャップ。
まさに銀時の大好物のナースコスプレをした恋人が目の前に現れたので、驚きと興奮と喜びのあまり鼻血を出してしまったという訳である。
「お、お前、久しぶりに銀さんに会うからって張り切っちゃうのはわかるけど、昼間っからコスプレは刺激が強ぇだろ!そんな淫乱な子に調教した覚えはありませんよォォォ!!」
「ぬしに調教された覚えはない!!」
「ていうか銀さん、ナース服ってだけで淫乱って、アンタどんだけ妄想してんですか・・・」
「うるせェェ!!つーか新八ィ!!お前どさくさにまぎれて写真撮ってんじゃねぇぇぇ!!」
「ご・・・誤解しないでくださいよ僕はお通ちゃん一筋ですから。でもナースコスプレというのは今後のお通ちゃんの貴重な萌え材料になるかもしれないから一応写真をですね・・・」
「新八、お前も鼻血出てるアル。」
月詠のあまりにセクシーなナース姿に男二人が騒ぎ始めたため、忘れかけていた羞恥心が一気に戻ってきた月詠は、耐えきれないとばかりに大声で言いはった。
「へ、変な誤解をするな!!コレは潜入捜査の為に仕方なく着ただけじゃ!!」
「「「潜入捜査・・・?」」」
月詠の口から出た『潜入捜査』という単語に、三人は目を丸くした。
「・・・っ吉原のとある店で麻薬の取引が行われるという情報が入って、でもその店というのがその・・・いわゆるそういう店だったものだから、いつもの浴衣だと目立ってしまって・・・その・・・」
「・・・んで仕方なくナースの格好して潜入捜査してたって訳か・・・?」
銀時がそう改めて聞くと、月詠はかあっと頬を赤くした。
捜査の最中は敵の動きに集中していたため恥を忘れていたが、それを終えた今。
よく考えたら物凄く恥ずかしい格好をしているということに気がついたらしかった。
ちょ、お前ナース姿しながら恥じらってんじゃねェェェ!!可愛いなオイィ!!萌えるだろ!!いや燃えるだろ!!やっべぇ興奮してきたんですけどどうすればいいですかァァ!!
と、銀時が心の中で叫んでいた最中、じっと見られていた月詠はついに羞恥の限界がきたようで。
「・・・っ着替えてくる!」
そう言い放つと、奥の自身の部屋へ逃げ込もうとした。
「!オイ待て!」
しかし、突然銀時に背後から腕を掴まれてしまい、それは阻められてしまった。
もうとにかく早く着替えたかった月詠は、半ば涙目になりながら『頼むから離してくれなんし!』と抵抗を試みたものの、銀時は月詠の腕を放さない。
そして、予想外の発言をされた。
「診察してください。」
「・・・・・・・・・は?」
「いや、歯じゃなくて出来ればカラダの方をお願いします。」
「・・・・・・何を言ってるんじゃ?殺されたいのか?」
「ハイ看護婦さんの色気で悩殺されそうです。下半身なんか特にやばいっす。」
「オイ銀時、子供達の前で何変態発言をしとるんじゃ」
「じゃあガキ共がいない所で診察してください」
「ぬしは先に頭の方を診察されて来い。」
「なんだよ〜どうしてもダメ?」
「当たり前じゃ変態。」
「仕方ねぇなあ・・・」
「・・・・・・!?ちょ、何す・・・っ」
変態発言を繰り返す銀時をあしらおうとした月詠だったが、突如銀時にグイっと腰を掴まれ、そのままフワリと銀時の肩に担がれてしまった。
「コ、コラ!!降ろしなんし!!何を考えて・・・っ」
「まぁいいじゃねーか。たまには趣向を変えてみるっつーのも。あ、オイおめーら。これから銀さんは万事屋に帰って看護婦さんと仲良くなるから。今夜は帰って来るんじゃねーぞ。」
そう飄々と言い放った後、銀時は肩の上でじたばたと暴れる月詠を担いで颯爽と去って行ってしまった。
残された子供達は、マダオに連れ去られたナースの後ろ姿を黙って見送る他なかった。
「・・・大人って不潔アル。」
「ほんとそうだね。」
「オメーもまだ鼻血垂れてんだヨ死ね。」
「・・・すいません。」
fin.
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