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□第二話 前編
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坂田銀時との出会いから暫くと経っていない頃。
百華の元には、『死神太夫と白夜叉が手を結んだらしい』という噂を聞きつけた不良達が次々と喧嘩をふっかけに来ていた。
月詠はこうなることを薄々予想はしていた。
成り行きとはいえ、歌舞伎町で一番の不良と関わりを持ってしまった以上、銀時を潰そうと目論む不良共が自分たちのところへ絡みに来るのではないかと。
そしてその予想はずばりその通りになってしまったようで。
百華は、まるで食べかすにたかるありんこの如く集まって来る不良達と片っ端から殴り合うという日々が続いていた。
最初の2、3日はまだよかった。
所詮絡んで来るのは、銀時と直接やり合う勇気がない小心者ばかりだったし、月詠を筆頭とした、男にも負けない実力者揃いの百華にとっては、さほど苦しい相手ではなかった。
しかしそれが一週間、毎日と続けば話は別で。
噂はどこまで広まっているのか、街を出歩く度に必ずといっていいほど喧嘩を売りに来られるため、さすがに百華の面々も疲れてきていた。
おまけに、その騒ぎを光の早さで聞きつける警官・土方にいつも以上にしつこく追い回され、正直ウンザリもしていた。
とは言っても、そんな事情を知るはずもない不良達は今日も元気に喧嘩をふっかけに来る訳で。
「オイ死神太夫。テメー最近白夜叉と仲良しごっこしてるらしいじゃねーか。あの暴君を仲間にするたァ、いい度胸だな。」
次の日も
「テメーあの坂田銀時とつるみ始めたらしいなァ。ってことは新宿中の不良共を敵に回す覚悟は出来てんだろーなコラ。」
そしてその次の日も・・・
「お前かァ!?俺等の天敵である坂田銀時を手なずけた女っつーのは!何でもタイマン勝負した後にラブホで一発かましたらしいじゃねーか!傷だらけプレイか!!傷だらけプレイか!!」
毎日毎日、最早30分置き程度に現れる不良達、それに加えて尾ひれのつきまくった噂話達に、月詠はついにーーー
「坂田銀時ィィィィィィ!!!」
キレた。
とうとう我慢ならなくなり、銀時が通う西校の校門前に再び訪れてしまっていた。
周りでは下校途中の生徒達がまたもや現れたレディースの総長に怯えた視線を送っているが、怒りに燃えていた月詠がそれに気付くはずもない。
すると昇降口から、いつものように棒付きの飴玉をくわえた噂の男が、テロテロとだるそうに歩いて来る。
「呼んだ〜?・・・ってアレ?月詠じゃねーか。何してんの?」
「何してんのではない!!ぬしのせいでわっちはこの一週間・・・っというかさりげなく呼び捨てにするな!!」
「んだよ機嫌悪ィなァ〜。アレですか?女子の日ですか?情緒不安定?」
「ああそれなら5日前に終わっ・・・・・・って何を言わせとんじゃァァァ!!」
「いや俺はお前の排卵日までは聞いてね・・・」
「うるさいこのエロ夜叉が!!」
しかし月詠がいざ文句を言おうとしたところ、またしてもこの男独特のペースに巻き込まれるハメになり。
危うく自分の女子的事情を口走りそうになった月詠は、目の前のノーデリカシー男に向かってあらん限りの声で怒鳴りつける。
一方で銀時の方はというと、そんな月詠の様子をさして気にするでもなく、いつものように口の中の飴玉をコロコロと転がすだけだった。
「で?何か用?もしかして一週間も経たないうちにもう銀さんに会いたくなっちゃったんですかー?」
「な・・・っ、何を馬鹿なことを言ってるんじゃ!!わっちは今日ぬしに文句を言いに来たのでありんす!!」
「はァ?何で俺がテメーに文句言われなきゃなんねーんだよ。」
「先日ぬしの助けを借りたせいで、この一週間新宿中の不良共に絡まれて大迷惑しておるんじゃ!一発殴らないと気が済まぬ!!そこへなおれ!!」
「へ?いやいや、ちょっと待て!!ソレ俺悪くねーじゃん!!完ッ全に八つ当たりじゃん!!むしろここは『この間は助けてくれてありがとう、銀さんv』って可愛く言ってみろや!!」
「誰が言うか!!大体ぬしが過去にどんな悪事を働いたかは知らぬが、あんなにも大勢の不良共の恨みを買っているぬしが悪いんじゃろうが!それに、き、傷だらけプレイなどと、妙な噂まで流されて黙っていられる訳がないじゃろう!!」
「いや知らねーよ周りが勝手に俺のこと敵対視してるだけだし!!それより傷だらけプレイって何だ詳しく教えなさいコノヤロー!!」
「知るかぁぁぁ!!目を輝かせるな!!」
「おい白夜叉と死神太夫ってのはテメー等か!!」
最早永遠に続くのではと思われる勢いで言い争っていた二人だったが、突然背後で聞こえたドスの効いた声に、思わずそろって口を閉じた。
振り返ってみると、そこには10人近くはいるだろう、ガタイのいい男達が二人の前でまさに戦闘態勢で構えていた。