非公開用

□僕の店主が犯罪者フラグ
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「やりましたね銀さん、あの依頼人、依頼料すごく弾んでくれましたよ!」

「ヒャッホウ!今日は焼肉ネ!」

「そうだなー。久し振りにパァーっと豪勢にいくか!」


仕事を終えた僕らは、いつもよりずっと温かい懐に今日の夕食を楽しみに帰路へ着いた。
途中、夕飯用の肉を買おうとスーパーへ行くと、お菓子コーナーに並んでいた新作を神楽ちゃんが「これも買ってヨ!」とカゴに入れる。
いつもならNGを出す銀さんも今日は余裕があるせいか「買え買えぇ!金ならあるんだ」なーんてブルジョアになりきってた。
もちろんそれに便乗する僕らは好きな物をたくさん持ってカゴに入れた。
会計を済ませた銀さんがペタンコの財布を見て「あっれー、なんでもう小銭しかないんだろ。金ってひとりでかくれんぼするっけ?」なんてブツブツ言ってたので、明日からはまた卵かけご飯の日々に戻るんだろうなぁ。

万事屋のこたつで思う存分食べ散らかした後、神楽ちゃんがさっそく買ってもらったお菓子を開けて食べている。
銀さんはそれを一口もらいながらテレビを見て、僕もその隣でテレビの中のお通ちゃんに癒される。


「そーいやいつの間にこたつ出したんだ?」

「昨日ですよ。もう随分寒くなりましたから。秋って短いですよねー」

「よっちゃん達も手袋とかマフラー巻いてたアル」

「もうそんな季節かー」


グダグダとそんな会話をしていると、テレビでも『この冬の一押しファッション!』なんてコーナーが始まった。
お通ちゃんの白いマフラーがものすごく可愛い。天使だ、画面に天使がいる。


「いいなー。銀ちゃん、私もああゆうの欲しいアル」

「ああゆうのって、あのモコモコしてるマフラーか?定春にくるまっとけばいいじゃねーか」

「いやヨ。定春を首に巻くのは疲れるアル」

「疲れるで済むんだ。さすが神楽ちゃん…」

「つーか去年買ってやったやつがあるだろ、それ使えよ」

「よっちゃんもああゆうの巻いてたネ。女の子は流行に敏感アル、常に新しいものを身につけていたいのヨ。そんなことも分からないアルか!?」

「神楽ちゃん、銀さんに女心説こうとしてもムダだよ」

「すっごく可愛いのに、なんで銀ちゃんは分からないアルか。これだからマダオはいやヨ」

「おい何でそこまで乏されなきゃなんねーんだ」


例のごとくくだらない言い争いが始まり、番組が終わるころ、なんだかんだぐだぐだと話にオチがついてその場は解散になった。

そして翌日。

姉上のおつかいでデパートに来ていた僕は、女性服の売り場にいる銀さんを見つけた。
ええええ!?なんでこんな所にいるの!?って思ったけど、銀さんが見ているのは昨日話題にのぼった白いモコモコのマフラー。
おもむろにそれを取ってレジへ向かう銀さんを見て、神楽ちゃんにプレゼントするつもりなんだと思い当る。
たまにはいいことするじゃないか!とニヤニヤしながら、マフラーがきれいにラッピングされる様子を遠くから見守る。
この後渡しに行くのかな。どれどれ、僕も点いて行って「銀さん、どのマフラーにするかすっごく悩んで買っていたよ」とひやかしてやろうか。

デパートから出た銀さんをバレないように尾行する。
が、銀さんは神楽ちゃんがいつもいる公園でも万事屋でもなく、寺子屋に入って行った。

こんなところに何の用だろうと、そっと物影から中を窺うと、一人の、十歳くらいの女の子に話しかけてる銀さんがいた。


「銀ちゃん!久し振りー!!」

「元気してたか?」

「うん。あのね、雪ね、この前テストで百点とったんだよ!?」

「おー、そりゃすげぇ。じゃ、ご褒美やらねぇとな」

「うわぁ、何これ。開けてい?」

「いいぞ」

「え?わああ、マフラーだ!!雪の白と同じ色ー。銀ちゃんくれるの?」

「ああ。似合ってんじゃねぇか?」

「うん!ありがとう、銀ちゃんだぁい好き!!」


女の子はそう言いながら銀さんに抱きついて、銀さんもニコニコしながらその子の頭を撫でていた。


…整理しよう。
あの女の子(おそらく雪ちゃん)を僕は知らない=銀さんのプライベートで知り合った可能性が高い。
あのマフラーはハヤリなだけあってそこそこな値段した=大事なプレゼント。
マダオ銀さんと女の子=犯罪のかほり。

ええええええええ!!??


どうしよう、僕の勤めてるところ大丈夫かな。
そんな不安を感じながら、僕はその場を後にしたんだ。






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