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□幸子
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私は幸せになる様に『幸子』と名付けられたのはいいが別に普通の幸子だ。
普通に恋もするし仕事もしている。
たまに不幸になるが誰がなんと言おうと幸子なのだ。
「藤田さん。きいてる?」
「すいません。」
藤田。私のファミリーネームも普通だ。世間的には友達にもいるだろう。いたって普通な名字だ。
「もういいわ。」
「はい。すいません。」
今の仕事はレストランでのサービス。人生の飛躍をしたいがなかなかできず今にいたる。
「あとバックのシルバーたまってるから片付けて。」
上司の西村友子。器の小さい上司でなんでもかんでもうるさくつっかかってくる。この仕事にプライドを持っているみたい。
お客様の前ではニコニコしてるのに裏では酷いもんだ。いつもブスッとしている。
そして私が言われた通りの仕事をしていると、
「あれは言い掛かりだよね。」
アルバイトの玄だ。玄と書いてヒカルと読むらしい。あだ名は『ゲンチャン』。普通この漢字は『ゲン』だなら仕方ない。一個下のアルバイトの子だ。
「あ、ゲン君。いや、私がいけないんだよ。考え事してたから。」
「いや、さっき友子さんクレーム来たらいよ。お子様から顔が怖いってさ。」
子どもは素直だ。本間友子の裏の顔もわかったんだろう。本間の笑顔は大人にはわからないうまい作り笑顔だ。
「それは、腹立つかもね。けど、矛先は私なんだね。」
「言いやすいからね。」
と無邪気に笑いながらホールにでていった。
ゲン君は猫以上に世渡り上手だ。あのかわいらしい顔で21歳だから羨ましい。
アルバイトながら駄目な私より数倍、接客業がむいている。
バイト二ヶ月でリピーターを掴んでいた。華の女子大生だ。
今は月に二回はそのお客様が来店する。
前に彼女いるのか聞いたら「面倒だからいらないの。」とモテ男っぷりを発揮していた。
まさに猫みたいな奴だ。
「ね〜幸子さん、お客様が呼んでる。知り合い?」
「え?」
慌ててホールにでる。
「あれあれ。42卓の方、夫婦みたい。」
目で卓を指して言った。
「わかるわかる。」
ホール初日に軽い会話をしただけのお客様だった。
その日がちょうど夫妻の40年目の記念日だったらしく。
私の案で写真をプリントし渡したのだ。
席に近付き、
「本日もご来店ありがとうございます。」
「どうも。」
奥さまの優しい笑顔が印象的だった。
「今日はさっちゃんにきいてほしい話があるんだよ。」
旦那さまは私をさっちゃんと呼ぶ。フルネームを言ったらあだ名をつけていただいた。小さい頃からそう呼ばれていたから抵抗はない。
「なんでしょうか?」
なんの躊躇もなく聞いてしまった。
「昔ね、私たち二人は偶然出会って結婚したんだけどね。君のお母さんの旧姓は朽木じゃないかな?」
「いや、違います。二宮ですね。」
「そうか。昔、助けられたんだよ。その女性が子どもが産まれたら幸子とつけると言っていたんだよ。」