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□幸子
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「…なんですよ。その時私の隣で震え上がってた女性が妻なんですよ。朽木さんがあなたのお母さんかと思ったのにな。」
朽木…。そして私は気が付いた。
「あの、朽木じゃなくて菊池じゃないですか?私の母方の叔母で柔道などの格闘技に詳しいんです。子どもを産めない体になってしまったらしく、その叔母のために母が私に幸子と名付けたんです。今は結婚して椎名久美です。」
夫妻は顔を見合わせ
「あなた…もしかするわ。」
「私は初の海外で浮かれ聞き間違えをしていたのかもしれません。」
旦那さんは頭をトンと叩いた。
そして奥さまが
「朽木さん、いや菊池さんは男を相手にばたばた倒して助けてくれたんですが、疲れたらしくその後にすぐに眠ってしまいました。着陸後に『幸子って名前だったらこんな思いはしないですかね。』って言って担架で運ばれちゃったんですよ。」
「昔、そんなことがあったんですか。」
その後、夫妻は食事を終えて帰っていった。
その日の帰り道、ゲン君と私は駅までの道のりを歩きながらそのはなしをした。
「それっていいですね。ウルトラマンの姪が幸子さんなんですよね。」
「ウルトラマンは男で叔母は女ですけどね。」
少し馬鹿にされながらもなんだか少し誇らしかった。