短編
□Ring in the future
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Ring in the future
この辺りにしては珍しく雪が降る今日この頃。
本日最後の授業を受けながらボクは教室の窓の外の雪達をじっと見ていた。
手に握るのは文房具なんかじゃなく、銀色に輝く指輪。
「…武藤、先生の授業はそんなにつまらんのか?」
教壇から睨む先生の低い声にぎょっとしてしまった。
い、いけない…ボクったら解らないからって堂々と余所見を…。
「あ、あの…、すみません…。」
「先生は責めてなどおらんぞー。余所見する程余裕があるってことはこの問題も勿論解けるよなぁ?武藤?」
「う…。解りません…。」
「全く…。…おや、もう授業が終わる時間じゃないか。次回までに43ページの問題を解いてくる事。以上だ。」
鳴り響くチャイムを聞きながら、ボクは心から安堵した。
呼び出し無くて良かったぜ…。
『相棒、さっきから何を見てるんだ?』
「指輪だよ。」
『登校中に拾ったやつか。』
「うん。…これ、シルバーかな?君の大好きな。」
最後辺りは少し強調して笑いながら言ってみた。
もう一人のボクはうーんと顎に手を当てて指輪を見ている。
君ってシルバー関係になると少し目の色変わるよね…。
『いや、恐らくプラチナだと思うぜ。』
「えっ、そうなんだ!…そんな高価なもの…無くした人、きっと困ってるね…。」
指輪をまじまじと見てみたら、言われてみればシルバーより光沢があるような…気がする。
よし、帰りに交番に届けよう。
ボクがそんな決心を固めた時、声が掛けられた。
「遊戯ぃ〜、余所見が見つかっちまうなんて災難だったな。もっと上手くやんねぇと、次こそ呼び出しだぜ。」
「なんかずっと上の空だったし…遊戯君、どうしたの?」
「城之内君!獏良君!…全然大した事じゃないんだけど…。」
ボクは2人に指輪を拾った事を話した。
「雪と一緒に降ってきたのかな〜。」
電波な事を言いながら窓の外の空を見上げる獏良君。
「それは無いだろ…。第一、当たったら痛いじゃねぇか。」
『もっともな答えだな。』
「もう、夢がないなぁ。遊戯君、その指輪見せて?」
「うん!」
獏良君の手にぽとりと指輪を落としてあげた。
「あれ、これって結婚指輪じゃない?」
ほら、と獏良君が指輪を差し出す。
「えぇぇ!尚更落とした人困ってるじゃないか!」
「本当だ。内側にイニシャルと結婚日が彫られてるぜ。…しかも今日じゃねぇか!こりゃ大問題だ…。」
獏良君から指輪を受け取った城之内君もボクと同じ考えみたい。
今日って…結婚式どうするんだろ…。
「ボク、今から近くの式場行ってみるよ!」
「結局、皆で来ちゃったね。」
白をモチーフにした豪華な建物を前に、ボク達は立っていた。
中では結婚式の真っ最中。…という様子でもなく、扉も門も開け放たれたまま、大勢の招待された人達だけが座っている。
『どうやら、いつになっても新郎新婦が出て来ないもんで皆不思議に思ってるみたいだな…。』
「は、早くしないと…!誰に渡せば良いんだろう…。」
「取り敢えず中に入って誰かに渡せば良いんじゃないかな?」
獏良君の言葉に皆頷いてボク達は門をくぐることにした。
しかし、門を過ぎたところで受付の男の人に呼び止められてしまって…。
「すみません、招待状はお持ちでしょうか?」
「俺達、落し物の指輪を届けに来たんだ。」
城之内君がすぐに答えてくれたものの、訝しげに見られただけで通してもらえなかった。
「せめて指輪だけ届けてくれませんかっ?」
「生憎ですが…そのような連絡は入っておりませんので…。」
「そんなぁ!」
がっくりと肩を落とした瞬間、聞き覚えのある声がした。
「城之内に遊戯じゃないの!」
「「え?」」