短編

□禁じられた名前
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禁じられた名前


お前が消えて、どれくらい経っただろう。

勝手に僕の中に住み着いて、身体を傷だらけにして。

挙げ句、僕が知らない内に去っていく。

入居する時も退居する時も大家さんに一言いれてからが常識だよ。

家賃も修理代も滞納してるし。






――あの悪い頭でよく考えてみなよ






そんな得にならないお前なんて大嫌いだったよ。

危険な事にいつも僕を巻込んで。

うんざりしていたんだ。全部勝手に決めて行動して…そのツケが僕にまで回ってくる。

冥界で閻魔様にでもお仕置きされるがいいさ。






――いたく辛く、厳しい罰を






遊戯君達にも沢山迷惑掛けて。

お前が表で悪さばかりするから僕は彼等と仲良くする機会もあまり無かった。

いつもいつも。

いつもいつもいつもいつも僕の邪魔ばかり。

どうして僕がこんな役まわりを…。

僕が思っていたことなんて何一つ分からないだろう。

僕があの闘いのジオラマを作った意味も。

お前の目はいつも僕を捕らえてはいなかったのだから。

分かるはずが無かったんだ。

そのくせにいつも自分を大きく見せて…。






――たいした自信家だよ





すました顔で黒のロングコートなんか着ちゃってさ。

いつの間にか減ってたお金のせいで僕がどれだけ節約していたかも知らないだろ。

そう、お前は何も知らない。

僕の名前すらお前は知らないのかもしれない。

お前は盗賊。

僕の身体を奪い取っていた憎き泥棒。

そんなことをしているから天罰が下ったんだ。

だからお前は消えなければならなかったんだ。






――いつも、そんなことばかりしてるから






清々する。

お前の願望は何一つ果たされることはないよ。

僕を丸め込むことも、2人の遊戯君に勝つことも出来なかった。

復讐を果たす事も出来なかったんだ。

これからもお前の望みなんか何一つ叶うもんか。

少しでも償いたいと思うなら謝りに来たらどうなの。

僕は絶対に許さないけれど。






――よっぽど謝らない限り






お前の名は呪われてる。

僕の姓と変わらないけれど、お前の名前は怨霊を呼ぶんだ。

捕まって、逃れられなくなる。


「お前はもう、終わりだよ。」


そして、僕も。


「そうでしょ?バクラ…。」


少しづつ、怨霊の影が近付いてくるのが分かる。


「…やっと呼んだなァ。宿主…。」


ほら来た。

お前の名前に宿る怨霊。

禁じられた名前を口にすれば最後。

僕はもう逃れられない。

落ちて墜ちて…。

深みに嵌まっていくんだ。


「バクラ、お前のせいだ。」


全て、お前の…。


「相変わらず素直じゃねぇな、宿主サマは。」


やっと、開放されたと思ったのに。


また絶望の生活だ。


「…僕はもう寝るよ。寝てる間に悪さしたらひっぱたくから。」


「ハッ、指図される覚えはねぇな。ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと寝ちまえよ。」


「…お前に言われるまでもないよ。」


「宿主。」


「まだ邪魔する気?」


「てめぇのメッセージ、確かに受け取ったぜ。」


僕がお前に答えてやる義務なんて無いんだ。

僕にとってはお前よりも久々の睡眠を摂ることのほうが重要なんだから。

それも、全部…ぜんぶ…お前、のせ…い……。


「やっと寝たな…。不眠症なんぞになりやがって…。俺はずっと見てたんだぜ?俺の可愛い可愛い宿主を、な。」


どんな時でも。

何があっても。

何処に居ようとも。






「…ただいま。宿主。」






〜あとがき〜
獏良がバクラに送ったメッセージは「――○○○」の部分です。
5つのこの部分に縦読みマジックをかけると…?

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