短編

□本来在るべき
1ページ/1ページ

本来在るべき


相棒…何故お前は…。


「ゲームの時間だよ…もう一人のボク。」


「やめろ!相棒!オレはお前とそんなことしたくない!」


「…勝負を受けないつもりなの…?させないよ。このゲーム、負けても受けなくても罰が待っている…。」


「相棒…お前は…。」


「さぁ…ゲームの時間だ。」






飛び起きて隣を見れば、健やかな寝息を立てる相棒の姿。


「相棒…。」


そっと頭を撫でてみた。

オレは、最近夢を見る。

内容は決まって相棒がゲームをオレに持ち掛ける夢だ。

しかも、闇のゲームを…。

段々と残忍で、残酷な心へと変貌を遂げる相棒が、オレには怖くて怖くて堪らなかった。

相棒を乗っとられてしまいそうで…。

オレが、要らない存在になりそうで…。


「夢一つにオレは…何を言っているんだ…。」


口では言ってみるものの、寝ても覚めても不安だけは拭えない。

相棒の奥に潜む何か。

それから逃げる為に、相棒に隠れてガラの悪い奴に闇のゲームを仕掛けたりもした。

その度に、相棒の残忍な心の気持ちが解るような気がしたんだ。

ザワリ、と心が騒いだ…。


「相棒…あいつは何だ…。あれは…お前…なのか…?」


「ん…。」


寝返りをうつ相棒の横顔からは、あの残忍な笑みは到底浮かび上がることは無い。

相棒の穏やかな表情を、オレは守る事ができるのか…。


――お前が、守るんだろう?


そう、オレが守るんだ。

相棒の代わりに仇成す者に罰を…。


――その調子だぜ。


ハッとした。

今のは…何だ…?


――オレは、お前さ。


「な、何だ…!?」


――勿論別の魂なんかじゃないさ…。オレは、お前′自身′…。


「お前は…一体…。」


――下らない情に流されるな。…罰ゲームをする瞬間、胸が踊っただろう?


「な、何を…!!」


――受け入れろ。オレを…自分を。


どこからか、手を差し出された気がした。

オレは戸惑っていた筈なのに、迷わずその手を取った。

その行為が、酷く自然な気がして…。


――さぁ、受け入れろ…。


額にウジャト眼が浮かぶ…。

オレ自身と名乗る者は最近夢でみる、残酷な相棒だった…。


「お前は…オレだったのか…。」


不敵に笑うヤツがオレの中に…。

これが、オレの本来在るべき姿。






『さあ、ゲームの時間だ。』







〜あとがき〜
魔王さま万歳!(笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ