短編

□頭痛
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頭痛


「うぅ…。」


いつも通りに朝起きて、いつも通りに朝食を作る。

いつも通りに食べて、いつも通りに学校へ…行こうとしていた。


「なんだァ?宿主サマよぉ…。随分弱ってるじゃねぇか。」


バクラの発言にも、いつも通り辛口な対応をする筈だったんだ。

けれど、今日はそうもいかない。

小言の一つでも言ってやりたかったけど、ジロリと睨むことしか出来なかった。

駄目だ…。少し振り返っただけで頭が…。


「や、宿主…!?お、おいッ!」


…うるさいな…。頭に響くから…少し静かに…。


「ど、どうしたッ!?宿主!返事しやがれ!」


玄関で壁に凭れるように座り込んだ僕をあたふたしながら見るバクラ。

いい気味。…とか言ってる場合じゃないや。

頭が…割れそう…。


「おい!おい!宿主!」

頼むから、揺すらないでよ…。

そんな事されたら…。


「……吐きそ…。」


「………は?」


よろよろしながらトイレに向かう僕。

頭痛いし、気持ち悪いしで本当は動きたくなんてない。

だけど、こいつの目の前で嘔吐することだけは嫌だったんだ。


「うぷ………。」


やばい。

やばいやばいやばいやばい…!

動いたら逆に吐き気が…。


「宿主ッ!少しだけ我慢しろ!」

口を押さえて一生懸命吐き気を堪える僕を突然抱えあげるバクラ。

何するんだ!なんて言えるわけも、言う暇も無く、トイレに連れて行かれた。


「う…げほっごほっ…。」


下ろされた瞬間便器に吐く僕。

………最悪だ…。

バクラに見られた。

後で何言われるか分かったもんじゃないよ…。


「…おい、大丈夫か?」


背中まで擦ってくれちゃって…。

知ってる?背中擦ると更に吐くんだよ…。


「うー…げほ……。…うぷ………。」


「我慢するんじゃねぇよ。全部出しちまえ。」


そ、その手に乗るもんか…!

とは思うんだけれど…僕の想いとは反対に吐き気は増すばかり…。


「……げっほ……うぅ…うえ…。」


なんたる失態…。

結局、すっきりするまでバクラに背中は擦られっ放しだった。


「ほら、うがいでもしやがれ。」


肩で息をする僕に、バクラが汲んできた水を差し出す。

吐きまくって、もう強がる元気もない僕は、素直に水の入ったコップを受け取った。

口の周りを軽く流して、口内を濯ぐ。

これで、見た目はなんとか大丈夫そう。

生理現象で潤んだ目は俯いて隠し、洗面所に向かった。

本格的にうがいをして、顔を洗って元通り。


「ほらよ、宿主。」


次はタオルまで用意してくれる。

妙に気前が良いじゃない。

…何を企んでるんだか…。

ちゃっちゃと顔を拭いて玄関に向かう。

さ…、予定より随分遅れちゃったけど、学校へ行こう。

吐いたら頭痛も少し治まったし…。


「オイコラ宿主。テメェ何処に行くつもりだ。」


「……え?」


「チッ…。前髪まだ濡れてるじゃねぇか…。」


そう言ってタオルで僕の髪を拭きだすバクラ。


「…何してるのさ。」


「それはこっちの台詞だっつの…。ベッド行け。」


「は!?」


愕然としていたらまた抱えあげられた。


「ちょ…!何するんだ!」


「黙って寝てろ!」


更にベッドの上に投げられ、布団を掛けられる。

僕は学校に行くんだよ!寝室に行きたいわけじゃないんだったら!


「着替えろ。ほら!」


そんな僕に次はパジャマを渡してきた。


「僕は今から学校に…。」


「うるせぇ。ベッドに縛り付けるぞ。さっさと着替えろ。」


「だから僕は…!」


「脱がすぞ!」


「出て行け!」


流石にあいつに脱がされるくらいだったら自分で着替えるさ…。

残念ながら、僕じゃバクラの腕力に敵わないしね…。

不本意だけれど、言われた通り着替えて横になった。
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