短編

□其れはとても儚くて
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其れはとても儚くて


「待てっ!遊戯!」


「遊戯っ!」






「城之内っ!遊戯が撥ねられたって…!」


薬臭い病院の中、モクバが俺達の元へと駆け寄って来た。


「どういうことだ!!」


息を切らせた海馬もやってきた。

赤く点滅する手術中のランプ。中では遊戯が今まさに生死の堺を彷徨っている…。

本田が泣きじゃくる杏子をなだめ、アメリカから緊急帰国した御伽も沈痛な面持ちのままだ。

獏良もずっと黙って俯いている。


「遊戯はな…飛び出した子供を…庇って撥ねられたんだ…。」


「そ、それで…、遊戯の容態は…?」


俺達の様子を見て怖々訊いてくるモクバ。


「…医者の人曰く、絶望的だって…。打ち所が、悪かったって…。」


ぼそぼそと獏良が呟くように言った。

妹を交通事故で亡くした獏良には、嫌な事を思い出させるには充分な状態なのかもしれない。


「なっ…なんだと…!?」


「お、俺は信じちゃいねぇぜ!遊戯がくたばるわけがねぇんだ!」


「当然だ!……遊戯!貴様、決闘王の称号を得たままくたばるなど、この俺が許さんっ!」


手術室の扉に向かい海馬が叫ぶ。

俺は信じない…!

今まで危険な闘いを共に切り抜けてきた遊戯が、こんなことで…!


「遊戯、遊戯頑張れ!お前はこんなことに負けるやつじゃねえ!」


俺も、海馬に負けないように声を張り上げた。


「遊戯っ…遊戯っ…生きて…!生きて遊戯…!!」


杏子も、泣きながら遊戯の命の可能性を祈る。


「遊戯君!君はこんなところで死んじゃいけないっ!」


「遊戯…!」


涙を堪えた御伽と本田も遊戯を応援する。


「遊戯…!オレはお前に助けられてばかりじゃ嫌だ!オレの恩返しを受けてないのに死ぬなぁ!」


ボロボロと涙を零すモクバも遊戯を想った。


「遊戯、君…。」


「獏良…。」


「遊戯君…生きて…生きて…!……天音…、遊戯君を助けてくれ…!」


よろよろと歩み寄り、そのまま床に膝を付いた獏良が手を組んで祈った。

遊戯、頑張れ…!

皆、こんなにもお前を想ってるんだ。

お前はその想いを無駄にしたりするやつじゃねえ!

俺達は願い、祈った。






「……遊戯……遊戯……。」


俺達が祈り始めてから程無くして、手術中のランプが消えて、中から遊戯のママさんが爺さんに支えられて出て来た。


「爺さんっ……!遊戯は、遊戯は…!?」
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