短編

□未来の宿主サマ
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未来の宿主サマ


ある日ある時ある気紛れで俺様は宿主の将来を考えてみた。






いつか就職して、スーツを着込んで宿主が働き始めたら…。


「はー…全くさ、何が悲しくて僕が上司のおっさんにセクハラされなきゃいけないのさ。あーもーやってらんない。本当やってらんない。」


仕事ではにこにこしながらも帰ってきた瞬間ネクタイ緩めながらぶちぶち言い出すのだろうか。


「今日も疲れた。おっさんうざかった。デブの馬鹿!」


スーツを適当にソファーに脱ぎ捨てて宿主は風呂で疲れを流すだろう。

まずはそれから。


「あーやだやだ。奥さんと上手くいかないからって何故僕に擦り寄ってくるかな…。迷惑…すっごく迷惑。気持ち悪い。」


ごしごし力を入れて身体を洗うこともあるだろうぜ。

面倒臭くなりシャワーで済ませる日も多くなって…。


「はぁ…本当やってらんないよ…。」


手早く身体を拭いてササッと寝間着を着込み、真っ先に冷蔵庫に向かう。

取り出すのは酒か。


「大体周りも黙って見てないで止めてくれても良いじゃないか。」


尚もぶちぶち言いながらソファーに座り、テレビを点ける。

別に見たいものがあるわけじゃない。宿主の事だ。取り敢えず点けた、そんなところだろうが。

ぷしゅっと音を立ててブルタブを開ける宿主。

そのまま豪快に口に流し込んで喉を鳴らせるだろう。


「ぷはーっ、本当、飲まなきゃやってられないよね。」


だらしなくソファーに凭れて宿主は飲む。飲む。ひたすら飲む。

缶が空になれば冷蔵庫へ行って次を取り出し、それを飲み切ればまた次。

そのうち面倒になってケースごと持って来る始末。


「これ邪魔〜!」


自分で脱ぎ捨てたスーツを蹴り飛ばしてソファーに横になりながら飲み始める。

これが、未来の宿主。


「チビでデブでハゲの三拍子のくせに何さ!【一晩一緒に居てくれたら係長のポストに君を置いてあげるよぉ?】じゃないから!余計なお世話だし!平社員で充分です!っていうか死ね!ハゲろ!」

遂には支離滅裂な事を言い始める宿主…。

実はこいつ、あまり酔って無い。

酒の勢いの名目があれば何でも言えるからな。


「またお尻触ったら今度は指一本じゃ済まさないからな…あのバーコード頭!!皆の前で横から扇風機当ててやる!」


何気に宿主は有言実行する奴だ。

勿論バーコード頭にとってそれが如何に残酷な事か宿主には分かっている。

それでも…、いや、だからこそ宿主はやるだろう。

恐らく来週辺りハゲ頭から数本の髪の束がふわりと風に…いや、俺様まで言っては流石に哀れか…。

他人を哀れに思うなんざらしくねぇが、自然と思っちまった。


「覚悟しなよ…セクハラ上司…!……おつまみ食べたくなっちゃったな。」

宿主のつまみコールからやっと本当の晩酌は始まる。


「おっつまっみおっつまっみ〜♪」


勿論用意するのは…。

ん?待て。

なんだこのリアリティは。

いつの間にかハンガーに吊されたスーツ。これは…。


「お前ー!おつまみ早くー!あ、今日は熱燗飲みたいからお湯で温めて来て〜。」


お前…。お前って誰だ。

宿主の未来の伴侶か?

いや、案外宿主は自分をお前と呼ぶ癖がついて…。


「聞いてる?はーやーくー!」

なんだ…なんだこの倦怠感…。

俺様は…まさか…。
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