短編
□見せたいもの
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見せたいもの
「遊戯くーん。今日ね、遊戯君に見せたいものが…。」
休日の昼下がり。
つい眠くなるような時間に、獏良は武藤宅にいた。
「なになに?」
えへっと笑って彼が取り出すは一本のDVD。
唯黒いだけのケースの中に収まった白いディスクだ。
「AVだよ。遊戯君。」
「AVだったんだー……AV!?」
笑顔でさらっと言いのける獏良とは打って変わり、顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を開けたり閉じたりする遊戯。
青春真っ盛りの彼には興味が尽きぬ一品だろう。
「もしかして見るの初めて〜?」
「城之内君が貸してくれて何度か…。」
脳裏にその時の光景がちらついたのかさらに顔が赤くなる。
「そっかぁ。じゃ、再生するね〜。」
「え!?こんな時間から!?」
魅惑の映像はやはり夜に見るものではないかと思うのは道理。
「ママや爺ちゃんも居るし…。」
「もう再生しちゃった〜。」
「えぇぇっ!」
遊戯の声も届かず、テレビに製作会社のロゴが映し出される。
しかし遊戯も内心見たくてならない事も事実で。
ごくり、と生唾を飲み込んで黒い画面を見つめてしまっても仕方が無いことなのだ。
「………。」
長いような、短いような始まるまでの時間。
それは、一つの音と共に終わりを迎えた。
【にゃお〜ん。】
「…………は?」
かちっと固まった遊戯の視線の先には、あられもない姿でごろごろしている…猫。
「可愛いよね〜。」
更には兎に子犬、ハムスター。
「A、V…って…。」
「AVだよ〜。アニマル(A)ビデオ(V)。」
「そんなぁ…。」
期待してしまった分、落ち込みも深い。
それでも、愛らしい動物達を見ているとそんなことなどどうでもよくなっていった。
「AVはAVでもアニマルの方だけど、バクラは異常に興奮してたよ〜。」
身を寄せ合うように眠る兎達を指差して獏良は笑う。
「通じるものがあるのかも〜。」
「だね!」
髪を一部立たせてバクラの真似をする獏良に釣られて遊戯もまた笑った。
「次はさ、城之内君辺りを騙してみようと思うんだ〜。」
玄関で靴を履きながら獏良がぽつりと言う。
「きっとすぐ飛び付いてくるね!」
「うんうん、それじゃ、お邪魔しました〜。」
「またね!」
ぱたん
閉じられたドアを確認して、自室に戻る遊戯に声を掛ける者がいた。
『相棒。』
「どうしたの?もう一人のボク。」
『夜の供が欲しいならオレが居るぜ!』
「……………。」
親指を立て、ウィンクまでする《遊戯》に遊戯は口端を引きつらせることしか出来なかった。
〜あとがき〜
実は最後のところ、『そんなに溜まってるならオレが…。』にしようとしてたなんて言えない言えない(ノωノ)