短編

□本日の決闘王
1ページ/2ページ

本日の決闘王


わーっわーっ


とある場所、とある季節に行われたデュエルの大会。

それは今まさに最高の盛り上がりを見せていた。


「青眼の白龍を特殊召喚!ターンエンドだ。」


そう、決勝戦である。

対戦カードは海馬瀬人対武藤遊戯。

海馬からしてみれば粘着かつ念願の決闘と云えよう。


「遂に出たか…ブルーアイジュ…。」


らしくもなくモンスターの名前を噛む遊戯。勿論、闇人格である。

ぼそりと呟いた言葉であったが嫁に関する言葉を海馬が聞き逃すこともなく。


「遊戯…!貴様ぁぁ!俺の青眼の白龍の名を噛むとは…何様のつもりだ!」


「えーっと…オレは確か王様だった気が…。」


「ふざけるな!さっさとカードを引け!」


頬を掻きながらああでもないこうでもないとぶつぶつ呟いている遊戯に痺れを切らし、海馬が急かす。


「オレのターン、ドロー!手札からクリボーを召喚!プレイヤーへダイレクトアタック!」


「なっ…!」


これには海馬も仰天である。

どんな手を使ったのか、と考えながらソリッドビジョンの接近に備えた。

が。


【エラー!エラー!宣言された攻撃は出来ません!エラー!エラー!】


突如遊戯のデュエルディスクから響き渡る機会音。

応援組は勿論、観客も唖然としている。


「おちょくっているのか遊戯!」


「じゃあ…クリボーを守備表示に…。」


「………。」


「………。」


「………。」


「………。」


「することが無いのならターンを終了しろ!」


「あ、ターンエンドだ。」


合点がいったように手を打つ遊戯。

そんな遊戯に海馬はブチギレ寸前である。


「青眼の白龍でクリボーを攻撃!ターンエンド。」


「オレのターン!ビッグシールドガードナーを守備表示で召喚!」


ビシッと音を立ててディスクに遊戯が宣言したカードをセットする。

縦向きで。


「……遊戯…キサマァァ!!」


「ど、どうした!海馬!」


「貴様はぺーぺーの初心者決闘者か!!!」


「ゑ?」


海馬の指差す先にあるのは攻撃表示のビッグシールドガードナー。

最早こめかみだけでなく手にまで海馬は血管を浮かせている。


「あー…守備守備…。」


急いでカードの形式を変更する遊戯に海馬は溜め息をついた。


「…本来ならば一度出したカードの形式を変更するのはルール違反だが…今回は特別に見逃してやろう。真面目に闘え!!」


「分かってるぜ海馬!」


何が分かっているのか。


「ターンエンドだ。」


「俺のターン。ドロー。青眼の白龍で守備モンスターを粉砕…。ターンエンドだ。」


若干やる気を無くしたまま海馬は未だ溜め息をつく。

ギャラリーからも決闘王である筈の武藤遊戯に冷たい視線が送られていた。


「オレのターン!ドロー!ブラックマジシャンを召喚!生贄コストはあったか忘れたぜ!許せ海馬!」


「………………まぁいい…これが最後だ。」


遊戯のお気に入りのブラックマジシャン。

流石にこれが召喚されれば遊戯も正気に戻るだろうと考えた海馬は相当心が広いのかもしれない。


「魔法カード、なんとかの魔術書を発動!場の魔法使いモンスターの攻撃力を5000アップさせるぜ!」


「字を読め!!そして桁が一つ多い!!!」


即座に飛んだ海馬の怒号の後、場に現われたカードは…。


「それは六芒星の呪縛だ!魔法カードですら無い!!!」







「いつつ…。」


「大丈夫か?遊戯。」


「うん、大丈夫だよ。城之内君。」


あの後遂にキレた海馬によって乱闘事件が起こり、大会は中止となった。

無論突然暴れ出したのではない。

海馬が一発殴ったところで闇人格の遊戯が「決闘者としてのマナーがなってないな、海馬。」などと口走るものだから更にエスカレート。

しかも殴り返す始末。


「いくらその時に殴られたのがもう一人の遊戯だからって身体は共用してるわけだしな…。」


そうだね、と困ったように遊戯が笑う。


「それにしても今日の決闘はあんまりだったわね〜。」


「まさかもう一人の遊戯があんな決闘をするなんてな…。」


がっかりと云わんばかりで2人も溜め息をついた。


「眠かったんだってさ。」


「……は?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ