短編2

□今年最後のparty night☆
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「おい…、凄ぇな…。」


「これ…、マジで獏良が作ったのかよ…?」


息を呑むボクの後ろで、城之内君と本田君の感嘆する声が聞こえた。

それぐらい、本当に凄いご馳走だったんだ。

ボクは料理の事なんて全く分からないけれど、朝早くからずっと準備を進めてたんじゃないかって思う。

手が込んでいて…、何よりとっても美味しそうなニオイがするんだ!


「料理が出来る…と云うだけのことがあるな…。」


もう一人のボクも面食らった様子で声を漏らす。


「やだなぁ、そんなに褒めないでよ〜。照れるじゃない。」


ぽりぽりと頭を掻く獏良君に「ホント凄いよ!!」と言いかけた時、ボクの視界を掠める二つの影…。


「やべぇな!ホントによ!ってワケで、いっただっきまーす!」


「ちょっと…、行儀が悪いんじゃない?」


「なんだよ〜、杏子〜。旨いモンは旨いうちに食う!それがご馳走への礼儀ってモンだぜ!!」


さっきの驚きは何処へやら…、早々と席に着いて食器を握る城之内君と本田君。

杏子の言い分も間違ってないけど、二人がそんな行動に出ちゃう理由も…、分かる気がする。

ホクホクと湯気を上げる料理は、まるでボク達を誘うみたいに部屋中を美味しい香りで溢れさせてるんだもん。

飛びつくな、って方が無理だよ。


「二人ともお腹空いてるんだねぇ〜。真崎さん、遊戯君に〈遊戯〉君、君たちもどんどん食べて食べて?」


指を指されたご馳走達に、思わず喉が鳴っちゃう。

見れば杏子もそうみたいで、目が合った瞬間に勢いよく何度も頷いていた。

一人だけ違ったのは、もう一人のボクだけで…。


「オレは…、相棒が一番のご馳走だぜ…?」


「ば、ばばっばば馬鹿言わないでよッ!!」


なんで、なんで吐息付きかなぁ!?

なんで吐息付きでそんなこと言っちゃうかなぁ!?もう一人のボク!?


「あ、獏良君のご馳走が呼んでる!杏子!食べよっ!!」


曖昧に笑いながらも、杏子は頷いてくれた。


「そうね。私もお腹ぺこぺこ!」


「実は僕もお腹空いてるんだ〜。食べよう?」


「おう!その言葉、待ってたぜ!!」


「もう食べてるくせに…。」


「何か言ったかぁ?」


「ううん、何も。」


笑いながら食卓に着いて無事にご馳走を堪能し始めたボク達。

城之内君、本田君を筆頭に物凄い勢いで食べて、もう満足も良いところだよ!

獏良君のお手製料理はどれもこれも文句の付けどころがないくらい美味しかったんだ!

ママの料理より美味しい…、なんて言ったら明日からご飯抜きになっちゃうかな…。

様子が気になってもう一人のボクを見てみたら…、彼もこの味の虜になって珍しく大食らいの様を見せていた。

もう一人のボクが食事に夢中になるなんて…、今まで想像もしてなかったなぁ…。

もごもごと舌鼓を打つボク達。

話に華を咲かせながら食べているうちに、お腹は満腹、気分は満足。

これ以上ないくらいの幸せを噛み締めていたんだ。


「ふ〜、満腹だぜ〜。」


「旨かったぁ…。」


「獏良君って本当に凄いのねぇ…。」


「喜んでもらえて僕も嬉しいよ。それじゃ…、そろそろメインイベントにしようかな?」


獏良君の言葉に、ボク達全員が首を傾げた。

メインイベント?

特に打ち合わせをしていたわけでもないから、当然何の準備もしてない。

折角のクリスマスだし、集まってどんちゃん遊ぼうよ!ってだけだったから…。


「僕から皆へのクリスマスプレゼントがあるんだ!」


眩しいくらいににこやかな表情で指を鳴らす獏良君。


「お、なんだぁ!?」


どんな仕掛けかは分からないけれど、彼が指を鳴らした瞬間に扉が音を立てて開かれた。

その先には赤く輝く大きなプレゼント箱…。


「わぁ…、人一人入れそ…。」


う、と続けようとしたその時。


「うおらっ!覚悟は良いかァ…?王様よぉ…!!」


プレゼント箱が中から破られて、突然人影が踊り出してきたんだ!


「ひゃあ!?」


「な、ななななんだぁぁ!?!?」


「何だこれ!?ドッキリか!?…って…、バク、ラ…?」


本田君の言葉に正気を取り戻してもう一度人影を窺ってみた。

そこに居たのは紛れもない、千年リングに宿っていた人格の…。

もう一人の獏良君に違いない。

ただ、ただね…。


「…お前、その恰好…。」


目に鮮やかな赤い服。

所々にあしらわれた白いふわふわが何ともチャーミングだ。

しっかり帽子まで被って、その上、大きな布袋を背負って…。


「おいおい…、どうしちまったよ?王様ァ…。このブラッディ・クローズの衣装を見てビビっちまったかぁ…?」


……はい?


「ちょっと、お前。次の手順忘れてるじゃない。」


「うるせぇ!誰が忘れるか、誰が!!ほらよ!遊戯!まずはテメェからだ!」


呆気に取られ、ついていけないボクが突然名指しされて思わず身構える。

何が起こるんだろう?とバクラ君を見つめていると、彼はおもむろにボクに何かを投げつけた。


「わ、わわっ!」


寸でのところで何とか受け止めたそれを、そっと確認する。

少し警戒した眼差しで、もう一人のボクもボクの手の中を見た。


「なんつったか…、ここで呪文を…、あー…、減裏ー苦裏棲魔棲?」


「「は?」」


手の中のものと、謎の言葉にボクともう一人のボクは顔を上げた。

バクラ君が投げつけたそれは小さな…、そして…、丁寧なラッピングが施されたプレゼント箱だったんだ。


「ごめん…、バクラ君、何て言ったの?」


「あ゛?」


「いや、だから…。」


「バクラ君、Say once again?」


流石はダンスの勉強をしに海外に行こうとしてる杏子。英語もペラペラだ!

でもね、杏子…。杏子の言ってる事もボクは分からないよ…。

英語なんて嫌いだぁ…!


「あれだろ…?俺の聞き間違えじゃなかったらメリークリスマス、って言ったように思えたんだけどよ…。」
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