短編2

□今年最後のparty night☆
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城之内君の言葉に、合点がいっていなかったボク達全員が納得の声を上げた。

恰好と云い、プレゼントと云い…、そこから導き出される答えはクリスマスだ。


「に、してもよ…。」


「うん…。」


「似合わねぇな…、バクラ…。」


「だな…。」


「え〜?そうかな?何気に似合ってると思ったんだけどなぁ〜。あっはっは。」


あっはっは、って…、笑うところなの?獏良君…。


「おらっ!城之内!本田!女!テメェ等もだ!減裏ー苦裏棲魔棲ッ!!」


意気込む声と共に袋からプレゼントを出しては投げ、出しては投げ…。


「おう!」


「ありがとう!」


「サンキューな、バクラ!お前良いところあるじゃねぇか!」


ボクと違って難なく受け止めた三人は何だか純粋に嬉しそうだった。


「ね、ねぇねぇ、獏良君…。」


「ん?どうしたの?遊戯君?そんな小声で。」


「えっと…、バクラ君って、あ、闇人格のね。彼、メリークリスマスの意味分かってない、よね…?」


イントネーションも滅茶苦茶だし、何よりプレゼントを投げる手に殺気が籠ってる気がしたから…、間違いないと思うんだ。


「そりゃ、あいつがそんなハイカラな言葉を知るわけないじゃない?」


ハ、ハイカラって…。言葉が古いよ…、獏良君…。


「しかもさっき…、ブラッティ・クロースって…。」


「あー、流石遊戯君。何かバレてる?」


「は、はは…。」


参ったな〜、と獏良君が口にした内容に、ボクは渇いた笑いを浮かべる事しか出来なかった。

彼曰く、折角のクリスマスなんだから何かサプライズめいていて、楽しいことをしたかったらしい。

そこで白羽の矢が立ったのが、バクラ君だったみたいだ。

クリスマスなんて知りもしなかったバクラ君に、12月24日の夜は血の復讐祭、と訳の分からない嘘を吐いたらしい。

復讐者は、歴代の復讐された者の血を吸った古からの呪いの衣を身につけなくてはいけない。

そして儀式を行うことで、復讐が果たされる魔法の日、なんだって…。

その儀式こそが、呪文を唱えながら呪われし魂が封印された箱を相手の近しい者に配る、と云う事らしい。


「西洋の文化なんて知らないだろうな、とは思ってたけど…、想像以上になーんにも知らなくてさ。僕の言うことぜーんぶ鵜呑みにしちゃうんだもの。あー、面白かった。」


…流石は獏良君…。

嘘の設定が妙に細かい。

ここまで細かく、そして緊迫した演技で説明されたら大半の人が騙されちゃうかも…。


「そして…、王様ぁ…、覚悟は出来てるんだろうなァ…。いくぜ!朽ち果てろ…!減裏ー苦裏棲魔棲!!!」


くわっ、と目を開いて、まるで野球の9回裏投手のようにプレゼント箱を振り被るバクラ君。

興奮で血走った目が何とも邪悪だ…。


「ぅオラァァァッ!!」


気合充分なバクラ君の掛け声と共に放たれたプレゼント箱は、殺人級の速度で飛んで…!

ぽすり、と間抜けな音を立てて見事にもう一人のボクの手に収まった。


「む、オレにもくれるのか。すまないな。」


にこり、と柔らかく微笑むもう一人のボクがなんとも言えず綺麗だ…。

……じゃなくって…。


「…獏良君…、バクラ君にあの説明は全部嘘だって教えてあげた方がいいんじゃ…。」


可哀想なくらい信じ込んでいるバクラ君に、現実は酷だ。

いや、本当だったら本当だったで絶ッッ対に駄目なんだけど…。

そう思いながら進言したボクだったけど、そーっとバクラ君を窺い見て、一気に哀れな気持ちになった。

彼は愕然として、プレゼント箱を投げた手ともう一人のボクを何度も…、そう、何度も見ていたからだ。


「何、故だ…。何故何も起こらない!?まさか…、失敗した…?ハッ!そ、そうか…!城之内、本田、女の三人に呪いの魂の箱を投げる時に呪文を省略したのがいけなかったんだな…!?」


ボクは言いたい。

声を大にして叫んであげたい。

全部嘘だったんだよ、本当はそんな日じゃないんだよ!って。

でも…、こんな状態の彼にこの真実は逆効果なのかもしれない…。


「おいバクラ〜!ありがとな!」


「最初はびっくりしたけどよ…、サンタのコスプレまでして出てくるなんて中々粋な真似するじゃんか!」


「本当本当!見直しちゃったわ!」


親しげに肩を叩かれるバクラ君…。

あ…、肩がぷるぷるしてる…。


「すまなかったな…、バクラ。善意で出てきたお前にオレは少しとは云え疑いを掛けてしまったんだ。心から謝罪するぜ。」


すまなかった、と彼の手を取るもう一人のボク…。

そんなこと言ったら…。


「触るんじゃねぇぇえええええ!!!」


もう一人のボクの手を勢いよく払い退けて、バクラ君は走り出した。

ボクはその姿が哀れで哀れで…、とても見て居られなかったんだ…。


「ちょっと…、待って!!」


獏良君が走り去ろうとするバクラ君の腕を掴む。

やっぱり、やり過ぎたと思ったのかな?

きっと獏良君なら傷付いた彼の心を癒してあげられるよね?


「一つ、言い忘れてたんだけど…。復讐に失敗したものはその身を生贄にしなきゃならない…。そうして、その呪いの衣は呪力を保ち続けているのだから…。」


ちょ、ちょちょちょちょっとぉぉぉぉ!?!?
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