短編
□Ring in the future
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振り返ると沢山のデュエルで共に闘った舞さんがいた。
正装に身を包んで。
「コイツらは通していいわよ。アタシの知り合いだから。」
「し、しかし…。」
「ちょ、ちょちょちょ…まさか…舞の結婚式だったのか!?」
「じゃあ…この指輪…舞さんの!?」
「そうだったんだ〜。おめでとう〜」
かなりショックを受けている城之内君と、びっくりしたボクと、朗らかに拍手を贈る獏良君。
『まさか舞だったとは思わなかったな…。』
もう一人のボクも今度ばかりは驚きを隠せないみたいだ。
「ちょっとちょっと!何勘違いしてんのよ!アタシは招待客!新婦の知り合いよ。…で、遊戯。今アンタ指輪がどうとか言わなかった?」
なんだ。舞さんじゃなかったのか。
さり気なく胸を撫で下ろす城之内君。うん。見なかった事にしてあげよう。
「あ…うん!この指輪、新婦さんのだと思うんだけど…。」
勘違いでびっくりしちゃったけど、本来の目的を思い出して舞さんに指輪を見せた。
「受付の人にそんな連絡はきてないって言われちゃったんだ…。」
「あら…遊戯が持っていたの!助かったわ!あの子ったら、式当日に指輪無くしたなんて言えないとか駄々こねてスタッフにも新郎にも言ってなかったのよね〜。」
呆れた素振りを見せる舞さん。
「良かったね。遊戯君。ちゃんと渡せて。」
「うん!それじゃあ、式の邪魔しちゃ悪いし、帰ろうか。」
「アンタ達も式見てったら?新婦の恩人だし、きっと歓迎してくれると思うわよ。」
良かった良かったと言いながら踵を返すボク達を舞さんが誘ってくれる。
「ぼ、ボク達、制服のままだし…。」
「いいんじゃない?折角のお誘いなんだからありがたく参列させて貰おうよ。城之内君もホラ!舞さんに見とれてぼけっとしてないで。」
「ばっ獏良、てめっ、誰も見とれてなんか…!」
「はいはい。」
それを見たボクともう一人のボクと舞さんは顔を見合わせて笑った。
ムキになると益々怪しいぜ。城之内君。
「ってわけだから、通してもいいわね?」
幸せそうに歩く二人。
周りの祝福を一斉に受けて微笑み合う新郎新婦さんにボクも惜しみない拍手を贈った。
「綺麗だね!もう一人のボク!」
『ああ。初めて見たぜ。』
クールに言ってるけれど、もう一人のボクの顔もまた満面の笑みだ。
幸せって伝染するみたいだ!
『相棒…何か騒がしくなってきたぞ。』
「本当だ…。何でだろ?」
「ブーケトスだよ!遊戯君!」
目をきらきらさせて獏良君が教えてくれた。
獏良君って、何気に乙女なんだね。
きゃー!と大きな歓声と共にブーケが空に放たれる。
大きく弧を描いてまっすぐこっちへ…。
しかし悲しいかな。ボクの運動神経は惨めな程に皆無だ。
避けることも、キャッチすることも出来ない。
「わ、わわわっ!」
取り敢えず顔をガードして目を瞑る。
ブーケトス如きで何やってるんだと思われそうだけど、反射なんだから仕方無いじゃないか!
歓声がきゃー、からおぉー、に変わった時、ボクはそろそろと目を開いた。
『大丈夫か?相棒。助けてやれなくてすまない…。』
「大丈夫だよ、もう一人のボク。気にしないで。えっと…ブーケは…?」
軽く見回してみると、ブーケはボクの頭の上で浮いていた。
いや、違う。城之内君がボクの頭の上でキャッチしてたんだ!
「城之内君、おめでと〜!」
「え、あ、受け止めちまった…。」
苦笑いしながらほっぺを掻く城之内君。
城之内君がキャッチしてくれなかったらボクはこの大勢の中で恥かいてたかも…。流石だせ!
「あら、城之内が取っちゃったのね。本当、運の強い男。」
舞さんもやってきて城之内君に拍手を贈った。
「あ、そうだ。舞!」
ブーケを城之内君は舞さんに差し出す。
途端に式場がしーんとなって、皆2人に注目し出した。
「やるよ。俺なんかよりお前の方が似合うからよ。」
「嬉しい事言ってくれるじゃない。ありがたく戴くわ。」
舞さんが受け取った瞬間に再び沸き上がる拍手喝采。