短編

□気になどしない
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『物欲ねぇのか、宿主サマはよォ。』


「皆で仲良く平和な生活を送れればそれでいいんだ。」


『はっ、ヘドが出るぜ。』


予想通りの返答をありがとう。


「じゃあ何もいらない。」


『何かあるんじゃねぇのかァ?よく考えてみな。』


「作業の邪魔だって言ってるじゃない。」


そう言って睨み付ければおどけた風に怖い怖いと軽く手を上げるバクラ。


『分かった分かった。今日中に考えておけよ?宿主。』


「ハイハイ。」


必要無いって言ってるのに…。


「何、企んでるんだか…。」


バクラが去ったこの部屋で、僕の呟きに答える人は居なかった。

居たら怖いけどね。







TRPGの人形を作り続けていつの間にかもう夜。


「お腹、空いたぁ…。」


ご飯、作らなきゃ。

今日は何作ろうか。

炒飯でいっか〜…。


「面倒臭…。」


キッチンへのドアを開けながら言った呟きで気がついたのか、待っていたのかは分からないけど、バクラがそそくさと寄ってきた。


『宿主、欲しいもの…。』


「今ご飯作って食べるから邪魔しないでくれる?」


ネギ刻んで、お肉は…、ウィンナーがあったっけ…。

後は冷蔵庫の冷やご飯と…。


『宿主ィ…。』


「うるさい。」


卵に、ラード…。

ラードあったっけ…。

いいや、適当に作ろう。


『欲しいものねェのか…?』


「黙って。」


炒飯を作っている間続いたこの応酬。

勿論食べてる時も。


『いい加減思い付いただろ?』


もぐもぐ


『チッ…、仕方ねぇ。して欲しいことでもいいぜェ?』


もぐもぐ


「黙って欲しい。」


ご飯くらい静かに食べさせてよ。


『もっと具体的な…なんかあるだろォ?』


ちゃっちゃと食べて部屋戻ろ…。

うるさいし。


「お前。」


『おっ、思い付いたかァ?』


「部屋で作業再開するから入ってくるな。」


『……へいへい…。』







「ふぅ…。」


僕の言い付けをちゃんと守って、邪魔が入らなかったお陰で完成までもう少し。

後はここを着色して…。

最後まで手は抜かない。

これが僕の情熱なんだ。

らしくなくても、実際そうなんだから仕方無い。

もう、少し…。


「で、きたぁ〜…。」


着色料も速乾性のものを使ってるから完全に乾いて出来上がり。

いつでもTRPGに使える。


「おいバクラー!」


『おい、宿主。』


タイミングを合わせたように重なった声。


「…何?」


また欲しいものを訊かれるんだろうな…。

いい加減げんなりしてきた…。
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