短編

□けーろーぷれぜんと
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けーろーぷれぜんと


「何が良いのかな…。」


「そうだな…。」


健康食品やマッサージ機の類いを見ながら二人は頭を悩ませていた。


「孫の手とか…?」


「孫から孫の手を贈られるのもな…。」


明日は敬老の日。

日頃の感謝を込めて彼らが祖父、双六に贈り物をしようというのだ。

しかし、これがまた中々決まらなかったりする。


「チョコレートは?」


「それはバレンタインじゃないのか?相棒。」


「ホールケーキ?」


「じいちゃんの誕生日はもう少し先だ。」


「ひなあられ?」


「それは雛祭りだぜ。」


「紙の兜とか…。」


「子供の日だな。じいちゃんは老人だせ。」


「鏡餅なんてどうかな?」


「それは正月だろう…。」


などと云う検討外れな物ばかり出てくるものだから決まる筈がないのだ。


「じゃあ花なんてどうかなっ!」


「いいんじゃないか?」


内心、やっとまともな物が出てきたと溜め息をつく〈遊戯〉である。

花売り場へと移動して、嬉々とした遊戯が一本の花に手を伸ばした。


「あ、相棒!?待て待て待て待てっ!」


「どうしたの?もう一人のボク?」


不思議そうに見やる遊戯の手には黄色の大輪を咲かせる花が握られていた。


「それは菊だぜ!」


「うん?そうだけど…?」


「いやいやいやいや、菊はマズイぜ相棒!」


「どうして?おけそくと、お線香とセットでじいちゃんにあげようと思ったんだけど…。」


完全に葬式セットである。


「相棒…それは暗に死ねととれるぜ…。」


流石の〈遊戯〉もこれにはげんなりせざるをえなかった。


「今後のことを考えてなんだけどなぁ…。」


現実的なのか、残酷なのか。


「花は、オレが選ぶぜ…。」


無難な淡い色の花を幾つか選んでレジに持って行く〈遊戯〉。

贈り物用にラッピングをしてもらうところで彼は唐突に遊戯を呼んだ。


「相棒。」


「なぁに?」


「花にメッセージカードをつけないか?」


「いいねいいね!」


同意を確認してその旨を店員に伝える。

そして渡された何も書かれていないメッセージカードとペンを受け取り遊戯に差し出した。


「何て書くんだ?」


「うーん…。今までありがとう…かな?」


〈遊戯〉は苦笑いを溢すしかなかった。


「惜しいな。過去形にするのは…ちょっとな。いつもありがとう、で良いんじゃないか?」


「そうだね!もう一人のボク、頭良いぜ〜!」


逆にそこまで酷い考えが浮かぶ相棒の方が凄いぜ…。と思う〈遊戯〉であったが、屈託のない遊戯の笑顔を見るとそんな言葉も引っ込んでしまうのであった。







「ちゃんと部屋に隠しておかないとな。」


なんとか買い物を終えて、帰宅した二人。


「(相棒一人で贈り物は選ばせられないな…。)」


今回の一件で痛感した〈遊戯〉。

ぼふっと音を立ててベッドに座り込む彼とは裏腹に、そわそわしている彼の相棒。

それを見逃すほど〈遊戯〉の洞察力は低くはなかった。


「相棒?」


「なっ、何?もう一人のボク?」


「何か…隠してないか?」


「う…。」


ずばりと言い当てられて言葉に詰まってしまう。


「実はね、君にあげたいものがあって…。本当は明日あげるつもりだったんだけど…。」


本来、遊戯は素直な性格である。


「これ、君に…。」


包装紙に包まれた箱を手渡されて〈遊戯〉は首を傾げる。


「オレに…?」


「そうだよ。」


「開けてもいいか?」


「うん。」


不思議に思いながら丁寧に包装紙を剥がすと、爽やかな植物の写真がプリントされた箱が現れた。


「……青、汁…。」


「明日は敬老の日でしょ?もう一人のボクへの敬老プレゼントだぜ!それを飲んで長生きしてね!」


確かに古の人物には間違いない。

だが、見た目といい、実動年数といい、敬老の日に該当するのかは謎である。


「……オレはまだ老人ではないつもりなんだが…。」


ぽつりと呟いた〈遊戯〉の言葉を聞いてか聞かずか、遊戯は尚も言い募る。


「今話題の青汁●昧だぜ〜!噂によると、従来の青汁より飲みやすいらしいんだ。」


「そ、そうか。あ、ありがとうな。相棒。」


礼を言う〈遊戯〉の表情筋が引き突っていたのは恐らく本人しか知らない。







〜あとがき〜
これは…ギャグ、なのか?

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