短編2
□今年最後のparty night☆
1ページ/5ページ
今年最後のparty night☆ 別体ギャグ
「お邪魔しまーす!」
「よく来てくれたね!さぁさぁ、皆上がって〜!」
空気の冷え込む冬の夜。
厚手のコートやジャケットに身を包んだボク達は寒さに身を縮めながらも笑顔で頷いた。
出迎えてくれた獏良君もやっぱり笑顔で、これから起こる楽しい時間に誰もが胸を躍らせていたんだ。
「獏良のマンションに入るのって…、闇のモンスター・ワールド以来だよなぁ…。」
ぽつりと呟かれた本田君の言葉に皆が苦い笑みを溢した。
確かに、あの闘いは壮絶だった。
だけど、良い思い出でもある。
あの闇のゲームでボク達の友情は更に固くなったし、何より…。
「お邪魔するぜ。…懐かしいな。此処はオレと相棒が初めて対面した場所だ。」
そう!そうなんだよ!
開口一番の言葉がそれだったことがあまりにも嬉しくて、ボクはもう一人のボクに抱きついた。
「ボクも今同じことを思ってたんだ!これって以心伝心なのかな…?」
「オレと相棒の心が繋がっていない筈がないぜ!相棒…、オレの今の心が分かるか?」
「えっと…、うーん…。君の心は分からないけど…、ボクの心の中では君に会えたことが嬉しい!って感情でいっぱいいっぱいだよ!」
「オレもそうだぜ!相棒!オレとお前の心は一つだな!」
今は夜だって云うのに、お日様みたいに眩しい笑みを浮かべてもう一人はそんなことを言うんだ。
ああ…、なんだろ、この気持ち…。
あったかくて、愛しくて、嬉しくて…。
「……おーい、俺達が居る事忘れてんじゃねーだろーなー。」
「真冬にあっちーな!」
「ちょ、ちょっと城之内…!」
喋々が飛び交うお花畑にトリップしていたボクの脳みそを、3人のそんな言葉が引き戻す。
「ち、違っ…!そんなんじゃなくって…!!」
「…違うのか…?相棒…。」
「やっ、違わないよ!…あ、あのっ、これはそのっ!!」
ちらりと杏子達を窺い見れば、やれやれと言わんばかりの表情…。
うわっ…、なんか恥ずかし…!!
なんだか顔が熱くて両頬を抑えたボクを、もう一人のボクがいきなり抱き締めたりするものだから、ボクのほっぺたは更に熱くなっちゃうんだ。
「このまま身体も一つに溶け合ってしまいたいな…。」
な、なんてこと言うんだよ!もう一人のボク…!
ご丁寧に吐息付きでさ!!
「遊戯君達〜、イイ雰囲気のところ申し訳ないんだけど〜、そろそろ始めるよ〜?」
「も、もももも申し訳なくなんかないよ!始めよ始めよ!!」
そんなに吃らなくてもいいじゃな〜い、と朗らかに笑う獏良君の表情がなんだかとっても意味有り気だ…。
いや!ボク達は決してそんな関係じゃ…。
「じゃあ…、始めるよ〜!恐怖のクリスマスパーティー!」
「おうっ!!」
「きょ、恐怖ってなんだよ…!」
「ん〜、なんとなく?」
怯える城之内君と、やっぱり朗らかに笑う獏良君の声でパーティーの幕は切って落とされた。
高校生一人で住むには広い獏良君のマンション。
その一室にボク達は案内される。
「あ、ここって…。」
見覚えのある扉だった。
間違いない、この部屋はボク達がモンスター・ワールドをした部屋。
ボクが、もう一人のボクと初めて言葉を交わした部屋…。
「…遊戯の周りにピンクのオーラ出てる気がするの、俺だけか?」
「気のせいってことにしておきましょうよ…。」
「あそこまで桃色オーラ出しときながら誤魔化すんだもんな〜、遊戯って天然か?」
「お、おい城之内…!そんなこと言うなよ…!」
「あ?」
「ばっ…、お前、杏子のこと気づいてねぇのかよ!?」
「杏子が…、何だよ?」
「…いいのよ、本田。あそこまで仲の良さを見せつけられちゃったら私だって諦めざるを得ないわよ…。」
「杏子…、お前も大変だな…。」
「なんだよ?何の話だよ?」
「…城之内、お前、勘鋭いのか鈍いのか分かんねぇな。」
自分の鼓動がうるさ過ぎて、後ろで交わされていたそんな会話に、ボクは気が付かなかった。
ちらり、ともう一人のボクを窺うと、彼もまた恍惚とした顔で扉の先を見つめていたんだ。
「もう準備は出来てるよ〜。腕によりを掛けて…!」
獏良君の手によって開かれた扉の先は、ボク達の記憶通りの部屋ではなかった。
モンスター・ワールドの巨大なジオラマは片づけられ、代わりに所狭しと並べられたご馳走の数々。