BOOK
□novel
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幸せ祈って〜firstkiss*黒鋼side
どう仕様も無いほど
自分の中で愛しく
存在している
いつも近寄ってくるくせに、触れよううとすると逃げていく。
拒絶なのだろうか−
そう思っても常にその瞳が俺に訴えかける。
"傍にいて欲しい"と
それが悲痛だった
声に出さないこいつが、これだけ弱いものだなんて思ってもいなかったから。
だけれど、そんな距離が何より苦しいものと互いに感じてるから。確信が欲しくてあの夜問い詰めた。
"お前がわからない"
"何が望みだ"
弱いくせに強がるこいつは、いつものように悲痛の声を押し込めて、仮初めの言葉を変わりに呟く。それがどうしても痛々しくて、聞いていられない。
それでも
背を向けた俺にすがりついた手は素直で、そして震えていた。
弱いならそうやって
素直に甘えればいいのにこいつは。
そんな甘ったるい事を思ったのも束の間で、目の前の存在に対する感情が自分の中でストレートに気付いた時、無意識に近いほど導かれながら口付けをした。
まるで予期しない出来事に目を丸くさせて、瞬時に頬を染める目の前の存在が余りに男の欲を擽る仕草で、つられて自分も恥ずかしくなった。
こんなに愛しいと
気付くのが少し時間が掛かった。まだまた自分は未熟だと気付かされる。
求められた手を握って夜を過ごした。ただ、何もせず眠り、肩と手に感じるこいつの暖かさに安心した。
朝はいつもとは違った眩しい気持ちで迎えられて、それが清々しかった。少し照れくさいけれど、いつもより近くなった距離
「積もったねぇ、雪」
「昨日はずいぶん
冷え込んだからな」
そんな他愛もない
それでいて愛おしい
そんな時間を一緒に
過ごせたらなんて。
***end
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