BOOK
□novel
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限り無く降り積もる
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DEPARTURES/globe
(セレス時代ファイ〜現代)
開かれた窓から
徐に手を伸ばす
ひんやりとした夜風が肌を撫で、白い指先より更に純白な結晶が堕ちた。
確認する間も無く消えたそれを、切なげに見つめた蒼い眼。
手を戻して、不安気な笑顔を浮かべた。
もし自分が手を伸ばさなければ、消えなかったであろう純白。
儚いものだからこそ
美しくあるのに、
それを壊すのは一瞬。
(…何かを破壊する力)
それは自分の内の矛盾
そして紛れもない真実
降り積もる雪のように、
この事実までも蓄積する
溶けてはくれない雪を
溶かすほどの熱が欲しい
(いつか、いつか…)
暖めて くれるだろうか
刹那に降り積もる想いが
いつか出逢うその人の
為だけにあればいいのに
窓を閉じた先に
暖かな紅を視た気がした
***************
「わあ、降ってきたね」
「今夜は冷えそうだな」
ファイと黒鋼は、開かれたカーテンから覗く灯りと雪に視線を移した。
街頭に映し出され
幻想的に輝く雪は
非道く美しく地へと
堕ちていく。
それに重なるのは
いつかの自分
「…黒様、この雪は
−積もると思う?」
「そうだな」
そう言って伸ばされた手
自分に触れて身体ごと寄せられる
彼から伝うその熱が蓄積した不安を溶かしてく。
そして
新たに積もるのは
愛しさという感情
互いに想うのは純白な感情
囁かれた言葉は
雪に消えた
《あいしてる》
雪に消えた言葉は
二人の耳だけに届いた
*
*
どこまでも
限り無く
降り積もる
雪と貴方への想い
*********fin
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