BOOK

□novel
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break


月の光が
写す輪郭

仰け反り
乱れ滴る

溢れ零れ
終わらない愛撫が
全身を伝っていく


愛しかったはずの重なりは今はもう、忌々しい交わりへと変わった。
ただ感情すらない
快感を求める為だけの−…

"愛しかった"人が
虚しくも中に果てた
同時に自分も空虚にも似た
卑猥な声と共に果てる欲望

また過ちを繰り返したという事は自覚している、ただ汚れた欲望とこの騒ぐ血が彼を欲するままに蝕む。




「ッ…、『黒…鋼』」




ふと視線を向けた先

彼の首から滴る血が幻影なのではないか−と朦朧とした意識の中に紅を視た。唇を運び滑らかに舌を伸ばす。入りきらない紅が艶やかに唇から伝う。

喉を通る鉄の味に
最後の意識を手放した。

***


全体の気だるさを振り切るように、朝の光を片方の瞳に写した。
隣には既に消えた彼の温もり。

それでも、柔らかく包まれた毛布と彼のコート。そして全ての処理を終えた自分の躯。





「…優しくなんかしないで」



(引き返せない)


(この愛しさに)





「−…壊れそうだよ、黒様」





次はどんな禁忌を

犯すのだろうか。




fin




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